地域で生きる/21年目の地域生活奮闘記㊾~病気や怪我で万が一入院しても重度訪問介護の利用を続けたい 前編~ / 渡邉由美子

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

人間誰しも健康で当たり前の日常生活を昨日と同じように今日も一年後も十年後も…続けていきたいと思っていると思いますが、不慮の事故や病気はいつ襲い掛かるか分かりません。健常者以上に重度の障がいを持つ人たちは普段から入院などに至る事が起こらないように体調管理や転倒などのリスク管理に気をつけながら意識して生活しています。

それでも避けられない入院という良くない非日常が訪れた時に地域で親や兄弟に頼ることなく、もしくは頼れる者が何らかの事情でいない一人暮らしの重度障がい者はどのようにしたら生活再建ができるまで過ごすことが可能になるのか。そんな時が来る前に日頃の備えとしてどう準備を重ねていけば良いのか、試行錯誤を重ねています。

こんな現状下において、平成30年4月から入院時における医療者とのコミュニケーションを支援するということを第一義的な目的に掲げた法的制度として、入院時においても障がい支援区分6の最も重い障がいと認定されている人たちを中心に、在宅で使っている重度訪問介護を入院時にも使える制度が本格的に施行されました。

この入院時にも平時と変わらない介護体制を求める運動は、1990年前後から当事者たちは悲痛な叫びとして求め続けてきました。平成30年4月以前は障がい当事者の訴えを聞き入れた少数の自治体が自治体独自の特例措置として認めてきました。それがやっと今日、一つの地域生活を支える制度として自治体間格差なく必要性に特化して認められることとなりました。

ここまで書くと「えっ、そんな有難い制度がいつの間に使えるようになったのか?」と喜ぶ方もいると思います。しかし残念ながら、様々な制約がついていて使いやすい制度とはとても言えない現状なのです。

もともと入院時コミュニケーション支援事業という名称でALSを筆頭とする神経難病の方たちの本人の意思確認をするにあたって、著しく難しいコミュニケーション技術を要する当事者に対して誤診や誤治療を避ける目的で生命を維持するために適切な対応を医療者ができるようになるまでという制約もついた形で運用されています。

また、それ以外のことはしてはならぬ、という誓約書まで書かされて認められる制度という性質を持っています。

当事者は端的にコミュニケーションが取れる取れないというようなことで介護の必要性を区別することがないようにと訴え続けてきました。そんな背景を持つこの制度をどう活用しながら本当に困った時に介護者を病室に入れられる制度に成熟させていけるのかということが今後の急がれる課題なのです。

話す事ができて自分の出来ない事を相手に伝えることの出来るコミュニケーションが成立するということだけで入院時の困難が全て解決できるわけではありません。会話が通じるということだけではなく、安静に休むためには体位の交換や関節同士がぶつかったりして痛みがでないようクッションをあてたりなど、看護師さんや医師には付きっきりで行う事の出来ない重度障がい者特有の介護があるのです。

逆に介護者に病気の治療や病気にまつわる看護はできないし、免許もないのでやってはいけないのは言うまでもないことなのです。

先日そんなことを論点に仲間が集まり、関係者を集めて話し合いを行いました。私は某団体の役員という立場で一個人ではなく団体として交渉し、様々な事例を頭に浮かべながら少しでも医療と介護の厚い壁を切り崩すべく、話し合ってきました。
重度障がい者は病の床につきながらも闘わなければならない現実はあまりにも過酷すぎると訴えてきました。

私たちの置かれている生活上の厳しさは一定程度理解できるとしながらも、院内感染などの病院として課されている重責もないがしろにはできないことである以上、入院時介護者をウェルカムとはなかなか言い難いという平行線の議論が続き、とても解決策がでてくるような前向きな議論は出来ぬまま継続審議となりました。

もしかすると日々現場で介護をしている介護者さんたちも人によっては医療的ケアをすることもある中で、看護と介護の違いを理解することが難しくなっている現状もあるのかもしれません。
そして、医療の現場の人たちも介護は誰でもが初見でも簡単にできることと勘違いしながら病院は完全看護ということを疑いもしないのだと思います。

日常生活で受けているような利用者が望むときに望むことをすかさず行う手厚い介護は、忙しく多数の患者を相手にしている看護師さんに望む方が無理ということをどう言葉だけではなく、理解していただいて、建前ではない日常の介護が病気時も継続されることにより、二次障害の悪化を防ぎ、病を早期に回復させる唯一の方法であることを認めさせていきたいと心から思うのでした。

コロナ禍で感染症のリスクを避けるためであることは当然分かるのですが、コロナでない病気で障がい当事者が入院した場合でも入院時介護者を病院に入れることを病院はかたくなに拒むようになりました。個室入院を強く勧められ経済的にもたないとの理由で入院ができなかった人も多数でてきています。

今まで、認められてきた人も拒まれるようになってしまい、いつ何時なにがあって入院をしなければならない事態になるのかなんて予測が立たないだけに解決を急がなければならないと強く思う体験でした。

次回に続く。


◆プロフィール

渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

関連記事

TOP