地域で生きる/21年目の地域生活奮闘記51~重度な障害を持っていても社会に参画したい~ / 渡邉由美子

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

先日衆議院議員選挙が終わり、そろそろ新しい政権下で世の中が動き出そうとしています。結果論、結局今までと変わらない政党がこの国の主権を単独で握れる議席数を獲得して、国の政治が周り出します。

今までも弱者は生きづらかったのですが、これからも重度障がい者を含めた社会的弱者は、ますます生きづらい社会を生き抜いていかなければならないことが決定づけられてしまいました。これからも障がい者運動という手段を使って地道に訴え続けていく必要性がさらに増したと思わざるを得ない今日この頃です。

コロナの感染者は表面上数が減り、ハロウィーンあたりから、経済対策の立て直しを旗印に世の中をコロナ禍前の状態に戻して経済を活性化させようという社会全体の動きが強くなってきました。

世の中が、普通に戻ることがいけないとは言いませんが、能力主義、生産優先主義のスピード社会の再来はそれについていけない人々をまたしても排除しながら進んでいく社会なのだということも忘れずに、頭の片隅に置きながら経済活動の再生を図ってほしいと当事者として私は切に望みます。

まず、コロナ禍対策としては持続化給付金の2回目が公約通り出るとか?条件が厳しくなるとか?定額給付金が0歳から18歳までの若者に対して一律所得制限を設けず、親が富裕層の家庭にも出るなどと様々な報道やニュースが流れてきています。

そんな中、今回の選挙においては躍進したとされるある政党が、過去に重度障がい者にとっては聞き捨てならないとんでもない発言をしていたことがわかりました。それは、重度の身体障がいを有したり、医療的ケアも必要であったりする議員が当選した時点での発言です。

○○代表党首のコメントとして、次のようなものが挙げられていました。それを改めてつい最近選挙が終わってから目にする機会を得て、読みました。それは重度な障がいを持つ人たちの就労問題を露骨に批判している今回躍進した某政党の主張を大手新聞が取り上げた新聞記事でした。

日常生活全てにおいて手を借りなければ生きていけない人たちが税金を使った「重度訪問介護」を長時間得た状態で就労したいと主張するのは贅沢だという趣旨のことを明確に述べていて、私たちが障がい者運動で正しい障がいの理解を。と長年働きかけてきている内容がかけらも理解されていないことがすごく残念でもあり、世の中の人の大半の認識はこんなものなのかもしれないと改めて認識しました。

○○党の党首のあまりにも無知な発言に驚きを隠せない私なのです。ADL自立が難しい状態というのをこの人はどのように捉えているのかもっと詳しく聞いてみたい気持ちになりました。

私はなにもこの政党を批判する文章をここに書きたいわけではありません。手を変え品を変え、私がやってきた障がい者運動が実っていないことを意味する発言なので、とても悔しく切ない思いになるのです。

自分で寝起きができないとか、生活すべてに他人の手を必要とするということと、職業的技能があるかないかということがイコールではないのです。そのことをどうしたら世に理解してもらえるのか本当に考えさせられる発言です。

現代社会では、AIやITも進化している訳ですし、私たちが、手を貸してほしいことは働く時の条件を整えるということであって、仕事そのものを介護者にやってもらって利益だけ当事者が得ようとしている訳では決してありません。

そこを正しく理解して、議員の議員特権ではなく、重度の障がいを持っていても私にしかできない仕事もあり、その仕事をきちんと自らの力で、成し遂げることによって賃金を得ていると言えるように制度改正を進める運動をしていきたいと思います。

どうしても重度イコール寝たきり、何もできない人、と決めつけず、実態を見てくれる社会を作りたいと思います。そんな明るい未来に希望ある暮らしが営めるように、ともに努力を重ねていきたいと思います。

今の世の中に対して、少々、批判を呈する文章と思われてしまうかもしれませんが、私は、そんなことをしたいのではなく、よく言われる障がい者の障がいを万人が客観的に正しく捉えた上で、ともに働くための諸条件を作っていくことを前向きにしたいと思っています。

日々社会参加活動をしている中でも、健常者に劣ると言われ、ともすると、能力の低さを露骨に批判され排除されそうになる中で、そんなこと言わないで、重度障がい者もともに生きがいをもった暮らしができるように入れてくださいとお願いしながら生きている人生です。

もっと深く言うならば、健常者も、優秀な人に蹴落とされながら、傷ついて働けなくなる人も取りこぼさない、社会に変えていきたいと思っています。

人生一度くらいは働いていますと言えるようになりたい、その願望は強いです。私に今更、何ができるかはいささか自信の無いところですが、少し見方を変えて、違ったベクトルから探せば私にしかできない仕事が想像できると信じています。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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