初めての重度訪問介護における熟練者同行② / 福武早苗

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

「まさか本当にこんな日が来るなんて・・・夢のようです。」

このご家族の言葉の中に込められている背景、まさにそれは家族が毎日何年も休みなく続く介護に疲れを感じている証拠だ。
社会福祉の充実ができていれば絶対に出てこなかった言葉だろう。

私の主観にはなるが、A市は、1日のほぼ大半を介護事業者ではなく個人である家族に負担を課すような支給決定が目立っており、重度訪問介護への理解が乏しいように感じている。

私はさっそくA市の障害福祉課へ問い合わせた。

「2018年(平成30年)4月に厚労省から通達があった重度訪問介護における熟練者同行の制度を使いたいのですが、当事者とケアマネは了承済みです。申請様式とかありますでしょうか。」

電話口の向こうから

「熟練者同行支援?二人介護ですか?・・・?」

そもそも障害福祉課の担当者がこの制度をご存じない様子に、私はまず驚いた。
調べて後日連絡すると言われ、待つこと1週間、そして10日が経過。一向に連絡をいただけないのでこちらから再度連絡すると、

「ケアマネには時間数申請の手続きを依頼しましたよ?」の回答のみ。

「事業所が記入する様式は結局どうなったのでしょうか?KK市は事業所サイドで作成しました。AM市やKO市はホームページにもありますよ。」

担当者はここでやっと

「未だ一度も当事者、事業者から申請が無かったので、様式を調べて協議の上データを送ります。」

という内容だった。

施行されて3年近く経つ制度がやっと使われるためのやり取り・・・
初めて使うから仕方ないのかもしれないけど・・・
とにかく、まずは一歩前進した―――

家族が病気になって介護離職を選び、不安と葛藤もありながら明るく前向きに生きるのは簡単ではない。
病院や施設へ預けることもまた簡単なことではない。
クライアントのご家族は、頑張っても誰からか褒めてもらえることも少なく、当たり前に時間だけが容赦なく過ぎる。
クライアント自身も、ご家族だからこそ言いにくいこと、してもらい難いことがある。

私は、まずは週1日だけど重度訪問介護の熟練者同行支援を使いながら、ご家族には自分らしく過ごして休める時間を持ってほしいと考えていた。
そしてクライアントには、ご家族が今までしてくれたケアを当社のアテンダントに任せて、自立生活を体感してもらいたいと考えていた。

土曜日の夕方2時間、介護保険の内容同様のスケジュールをそのまま繋げ、朝の注入やモーニングケアまで全て終わらせておけば、ご家族とクライアントにとっての相乗効果は非常に大きい。

このクライアントの熟練者同行支援のスタートに少し遅れは出たものの、3か月で120時間の支援に就くことができた。
その間、新人アテンダントは熟練者以上の頼もしい支援者になり、クライアントとご家族にとって大切な存在へと成長した。

「まさか本当にこんな日が来るなんて・・・夢のようです。」

夢は、現実になりました。

重度訪問介護における熟練者同行を使うポイント

まず、熟練者同行を使うためには前もって計画を立て、自治体に受給者証の時間数変更をしてもらわなければ利用出来ません。

1、制度の概要(報酬告知等に掲載された主な要件等)

⑴対象となる利用者
障害支援区分6の重度訪問介護利用者

⑵時間数
新採用ヘルパー毎に算定開始から120時間以内

⑶人数
一人の利用者につき、年間3人の新採用ヘルパーまで算定可能

⑷加算の算定方法
従来の二人派遣の枠組みを利用し、新採用ヘルパーと熟練ヘルパーが2人で支援を行うことについて、2人分の時間数の報酬算定が可能
(※報酬自体はそれぞれ所定単位数の85/100)

⑸新採用ヘルパーとは
新規に雇用を開始したヘルパーで採用後6カ月以内の者

⑹熟練者ヘルパーとは
当該利用者の障がい特性を十分理解し、適切な介護を提供できるものであり、かつ、当該利用者へのサービス提供について利用者から十分な評価があるヘルパー

⑺その他留意事項
・本制度は利用者の状態像や新採用ヘルパーのコミュニケーション技術を踏まえて支給決定されるものである
・同行支援にかかる新採用・熟練ヘルパーが、それぞれ異なる事業所の所属でも可
・同行支援中に新採用・熟練ヘルパーが見守りを行っている時間も報酬の対象となる

全国的に理解と認識の薄い重度訪問介護における熟練者同行支援。
まだまだ利用していないクライアントがいらっしゃると思います。
申請に手間がかかる等を懸念せず、使いこなしてみてはいかがでしょうか。

 

福武 早苗(ふくたけ さなえ)
ホームケア土屋 大阪

 

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