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結婚制度は誰も幸せにしない 子ども編 / 安積遊歩

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

私が娘を産んだ時、私は結婚制度に反対だったので、娘は私の姓を名乗った。彼女の父親は認知はしたが、彼女に自分の姓を名乗ってほしいという要求はまるでなかった。だから、彼女はずっと安積宇宙だ。15歳直前にニュージーランドに移住し、今はそこで研究員として働いている。それまでは私たちは家族3人プラス、たいてい数人のシェアメイトがいた暮らしだった。娘は私と同じ安積姓で、その他の人たちがそれぞれに苗字が違うのはあまりに普通で、それはそれで何の違和感もなかったろう。

今、自民党の憲法改正がコロナ感染の陰でなかなかきちんと話題にもなっていないけれど、これは本当に怖いことだ。戦後少しずつ民主主義が言われ、子どもの人権というポリシーが広がってきた。しかし、この改正案は私にとっては全くの改悪案である。なぜなら、家族の役割を強調する様々な文言の中で、特に子どもの人権が脅かされていると見えるのだ。

尤もわたしから言わせれば、現行の憲法であっても子どもの人権に徹底的に配慮されているとは言い難い。子どもの権利条約が出てきたときには、それなりに期待が高まった。しかし、日本の文科省教育は子どもの中でも特に人権が守られるべき障害を持つ子どもに、隔離や分離教育を強いている。

結婚した夫婦の間に生まれた障害を持つ子どもの親は、この文科省の推し進める隔離分離政策をほとんど抗い疑うことなく受け入れる。なぜなら、結婚制度の中で幸せに暮らすためにはそうすることが必要なのだと教えられるから。

ところが、子どもたち自身の本質を見定め、そこに立って生きようとする力は隔離分離を拒否する。障害がない子どもにとっても隔離分離教育は不自然なことで、多様性のない教室の中で彼らは人との関わり合いという最も大事な学びを阻害される。

私は、娘を保育園や幼稚園には入れなかったが、地域の小学校には介助者をつけて通えるようにした。そのためにまず、就学児検診には連れて行かないということを決めていた。

この制度は、障害を持つ子は特別支援学校か、あるいは支援学級へと振り分けるものである。6歳の春に義務であるかのように通知がくるが、私はその通知を無視し、従うことはやめた。

結婚制度もそうだが、この就学児検診も全く義務ではない。親が連れて行かなければならないという強制力はないのだ。にも関わらず、ほとんどの親は6歳の子どもたちをどの学校に入れるかを、自分では決められないと思っている。それどころか、地域の教育委員会からのお知らせが来たらそれに従わなければならないと思いこまされている。これは大いなる間違いだ。

憲法によって子どもに教育を受けさせる権利が親にはあるとされている。つまり、子どもは教育を権利として得る主体なのだ。その中で文科省によってなされる学校教育は、国によって保障されている一つの選択肢でしかない。その教育の有り様が親や、そしてもちろん子ども自身の主体性によって選び取られるものであるなら、問題はそれほどないだろう。

ところが、明治2年に富国強兵や国体護持を目的に作られた国策としての学校制度。その中に、子どもの主体性などという民主主義は片鱗もなかった。だからその後の天皇制教育が結婚制度を維持させる家父長制と相まって、アジアの人々の歴史にどれほどの苦悩を拡散したかは、歴史上明白である。

結婚したら子どもが産まれ、子どもができたら学校に行かせる。学校で勉強することによって納税義務を果たし、強力な国を作る。その一連の流れの中に子どもの意思はない。だから学校が強制であると感じとる子どもたちは不登校をする。結婚制度の歪さに嫌気が差した女性たちも離婚をする。

しかし、不登校も離婚も結婚制度こそが常識であり、幸せの根幹なのだとするシステムの中では、その選択はなかなか擁護されず尊重もされない。不登校の子どもたちと関われば関わるほど思うのは、結婚制度の歪さの中で苦しんでいる親たち、特に女性たちの姿だ。

学校制度の中での自由ではなく、人としての本質的な自由を模索する子どもに学んで、結婚制度からも自由になっていってほしいと親である大人たちに心から願う。

私自身は激しく結婚制度にトライして、その差別の酷さを体で深く味わった。だから娘には、女性として持たされるであろう結婚願望のカケラさえ手渡したくはなかった。娘は今、「あなたのもとで育ったから結婚願望はまるっきりないよ」と言って笑う。

私と同じ体の特徴を持つ彼女が結婚願望に振り回され、右往左往するのは全然見たくなかった。だから私は幸せな娘との関係を作れたといえる。その関係は、母娘というよりは、互いに心からの自由をつくりだそうとする同志的つながりである。

◆プロフィール
安積 遊歩(あさか ゆうほ)
1956年、福島県福島市 生まれ

骨が弱いという特徴を持って生まれた。22歳の時に、親元から自立。アメリカのバークレー自立生活センターで研修後、ピアカウンセリングを日本に紹介する活動を開始。障害者の自立生活運動をはじめ、現在も様々な分野で当事者として発信を行なっている。

著書には、『癒しのセクシー・トリップーわたしは車イスの私が好き!』(太郎次郎社)、『車イスからの宣戦布告ー私がしあわせであるために私は政治的になる』(太郎次郎社)、『共生する身体ーセクシュアリティを肯定すること』(東京大学出版会)、『いのちに贈る超自立論ーすべてのからだは百点満点』(太郎次郎エディタタス)、『多様性のレッスン』(ミツイパブリッシング)、『自分がきらいなあなたへ』(ミツイパブリッシング)等がある。

2019年7月にはNHKハートネットTVに娘である安積宇宙とともに出演。好評で再放送もされた。

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