地域で生きる/22年目の地域生活奮闘記77~改めて入院時介護を考える~ / 渡邉由美子

私は、重度訪問介護の制度を利用して、毎日の生活をいわゆる訪問介護事業所から派遣を受けるという形で生活している部分と、市町村に無資格のサポーターを自己推薦して介護に来てもらう「地域参加型介護サポート事業」という自薦の介護人と、純粋なボランティアで関わってくれる人を、一つの反物を織り上げるように組みあわせて毎日の生活を営んでいます。

このような形に生活スタイルが固定化したのは私が一人暮らしを始めるとき、いやそれ以前から介護が必要でも他人介護を得られる公的制度などなかった時代から家族や友人、親戚だけに頼った生活は難しくなっていたことに端を発します。

ボランティアではあくまでも自分の空いている時間を有効活用するということになるのは当たり前のことなので、来れる人がいなかったら穴があくことにならざるを得ません。

人はみんな基本的には自分が生きていくのに精一杯なぐらい忙しいですし、少し余裕のある時間があれば自分の時間として身体を休めたり、自分の楽しみのために時間を使いたいと思うのは当然のことです。

私自身もそのような考え方に歳を重ねるごとに思っているのです。そこで障がい者基本法を基礎とした上に障がい者総合支援法が確立され、その中で位置付けられている重度訪問介護を生活の基盤として活用しているわけです。

最近、法律が定めていることなので仕方がないと思いつつも、法律は誰のためにあるのかと考えてしまうことがたくさんあります。昔はその日に夜間を一緒に過ごしてもらう介護者を大きな主要駅のターミナルに自ら出向き、その日を過ごす事が出来る介護者を自分でゲットして暮らしたものでした。

そんな時代から考えれば、今は事業所と契約をしていれば、介護者が派遣してもらえるように、介護人材不足と言われながらもシステム的に整いつつあるので、それはそれで命の保障という観点からするとよい時代になったと言えるのです。

しかし一方で、一定の定められたルールに則って生活しなければならないしばりが出てくるので暮らしづらいなあと思うのです。

一例を挙げれば、介護者個人としては日ごろの関係性上や生活を支えているのだから利用者がどんな状況になっても介護をし続けたいと思っていても、事業所という立場からすると派遣できないという事例があるのです。

それが今のところ大きいのが入院時の介護の派遣なのです。少し収まってきたとはいえ、コロナ禍が完全に消滅した訳ではもちろんありません。そんな中で、入院時ヘルパーの制度を使って必要な人に入院時も介護を提供し続けようと思うと、一番確実で短時間で結果の出る抗原検査を受けなければならないのです。

今は、街中の空き店舗などで無料のPCR検査が受けられる場所が増えてきました。しかし、抗原検査は在宅の障がい者の介護に行くためには、有料のため、その費用を利用者が負担するのか?事業所が負担するのか?ということが大きな問題となっています。

入所でも通所でも施設系の職員が利用者の生活維持のために検査を受けた場合、厚労省が負担するシステムが確立されているのです。暮らしの場が公設公営の場合は、国からその分の予算が出るのに、個人の生活を支えるために入院時の介護に入ろうとするときには、補助が全くないのです。

そして多くの場合、病院側の都合で個室入院をしなければならないことが多く、多額の自己負担を請求され、それが支払えないがために、本当は入院の必要がある利用者も、薬を持たされ在宅に留まって介護を受けるように仕向けられる結果となってしまうのです。

このような事をしているうちに、もし病状が急変してしまった場合、命を落とす危険性もはらんでいるのです。

コロナは感染症なので、個人の介護者の人が普段の関係性からしてどんな状態の時でも必要な介護を提供したいと思った時にも、その介護者は事業所に雇われているし、当然他のご利用者の介護もしているので、介護者が感染症の媒介になってしまっては困る。

みんなで一定期間経過するまでその感染した利用者にしか入れないとなると、小さな事業所は潰れてしまう危険性も大いにあるのです。そこに、支えたい気持ちだけではどうにも乗り越えられない壁があるのです。

そのようなあらゆるリスクを考えて、当事者と介護者が運命共同体の如く支え合って、小さな事業所を作って生きていく生き方を選択することも考えられていますが、そんな少数精鋭の事業所を作ることが困難な利用者は、いくら入院時ヘルパーの制度が平成30年度から認められても派遣してもらえる事業所がないということで、人手の足りない看護師の介護を無理やり受けて、基礎的な病気が治っても、別の二次障がいを併発して帰宅することになってしまうのです。

制度がせっかくできたからには、病院側の説得と共に、みんなが希望すれば使えるように費用面からもサポートが必要です。やってあげたいけれどその介護者にも家族があり、その介護者を依頼している他の利用者にも多大な影響があると、絵にかいた餅で終わることになってしまうと思います。

事業所の立場、個人の立場、様々あるのは分かりますが、どんな時でも利用者が地域で生きる事が保障されるように考え続けていきたいと思います。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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