【「小さな声」を探し求める―「個」が躍動する組織のつくり方― 書評】第2回 S1グランプリ

『「小さな声」を探し求める 「個」が躍動する組織のつくり方』書評

本書を読んで最も印象に残ったのは、「組織や個々人を成長させるのは、大きな声ではなく、小さな声、声なき声である」という考え方である。

ややもすると、職場では発言力のある人や成果を上げる人の意見が注目されやすいが、一方で高齢者や障害者、生活に様々な困難を抱える人など、社会的に立場の弱い人たちと呼ばれてしまいがちな方々の思いや声は見過ごされてしまうことが少なくない。

そのような「小さな声または声なき声」に耳を傾け、一人ひとりの“あるがままの存在そのもの”を尊重することが、組織だけでなく、ひいては社会全体をより良くすることにつながると伝えており、非常に共感した。

特に印象に残ったのは、人を「支援される側」と「支援する側」に分けるのではなく、一人の人間として尊重し、その人が持つ力や可能性を信じる姿勢である。

高齢者や障害者は、時に「できないこと」に目が向けられがちである。

しかし本書では、その人ができることや、その人らしく生きることを大切にする考え方が示されており、本当の意味での共生社会とは、このような価値観の上に成り立つものだと感じた。

また、介護や福祉の現場では、利用者本人だけでなく、その家族や支援者も多くの悩みや負担を抱えている。

本書を通して、一人の「人の声」を丁寧に聴くことは、その人の人生や背景、家族の思いまで理解しようとする姿勢につながるのだと学んだ。相手の立場に立って考え、小さな変化や困りごとに気づくことが、信頼関係を築く第一歩になると改めて痛感した。

さらに、リーダーや管理職、経営的立場に就く者に求められる役割についても考えさせられた。

優れたリーダーとは、自分の考えを押し付ける人ではなく、現場で働く職員や利用者の声を受け止め、誰もが安心して意見を言い合える環境をつくる人である。

高齢者や障害者の支援においても、本人の意思を尊重し、「何をしてあげるか」ではなく「どのような生活を望んでいるのか」を一緒に考える姿勢が重要であると改めて感じた。

私自身、この本を読んで、社会的弱者と呼ばれてしまいがちな方たちは決して特別な存在ではなく、誰もが年齢を重ねれば高齢者となり、病気や事故によって障害を持つ可能性があることを改めて考えた。

つまり、誰もが支える側にも、支えられる側にもなり得るのである。
そのため、一人ひとりを尊重し、小さな声を大切にする社会を築くことは、未来の自分自身を守ることにもつながるのではないかと思った。

私自身、これまで通算で25年ほど、介護業界に身を置かせてもらっているが、これまでの自身の歩みのなかで、果たしてどれほど「小さな声」を「声なき声」を掬いあげることができていたか、耳を傾けられていたのか…

そう自問自答すると、疑問符は拭えない感がある。
関わらせていただいた方々に対し、やり切れなかったことやほろ苦い思い、後悔の念は正直、山ほどあると言っても決して過言ではない。

本書を読み進めていくなかで、こうした自責の念と同時に、今現在、関わりを持たせていただいている方々や、これから出会う新たな出会いに向けて己の襟を正し、真摯に、愚直に向き合わせていただかねばという原点回帰をすることができたようにも思う。

本書は、単なる組織論や経営論ではなく、「人の尊厳とは何か」「共に生きる社会とは何か」を深く考えさせてくれる一冊であった。制度や仕組みだけではなく、人を思いやる姿勢や対話を積み重ねることが、誰もが安心して暮らせる社会につながると感じた。

私も今後は、職場や日常生活の中で、声の大きな人だけではなく、発言しにくい立場の人や支援を必要とする人の思いに、より一層目を向け、心を配り、「小さな声」「声なき声」に耳を傾ける姿勢を大切にしていきたい。

本書で得た学びを行動に移し、多種多様な人々が互いを尊重し合いながら生き続けられる社会づくりに少しでも貢献していければ、そしてそれらを永続していかねばと強く思った次第である。

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