より良い組織づくりのために / 長尾公子(取締役 社長室室長)

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

よく「人生の1/3は睡眠時間である」「睡眠の役割を考えよう」「睡眠の質を高めよう」という類の話を聞き、やけに高額な枕やマットが売られているのをテレビでもショッピングモールでも目にします。
さて、睡眠と同じか多くの場合はそれ以上に、私たちが働く時間は明らかに人生の中で大きな役割を占めます。
「働くということの意味」や「気持ちの良い働き方」などといったことについては、もっと話題に上ってもよいはずです。そして、何度問い直しても良いはずです。

株式会社土屋には、現在1000人を超える人たちが所属しています。
「約1000人の組織」と言ってしまうのは簡単ですが、この言葉はほとんど何も表さないと言っていいでしょう。
客観的な数を伝えるだけの言葉に過ぎません。

それは、私たち、株式会社土屋には、これまでの人生において培われた思考や経験を鑑み、これからの人生の一部を、誰かの人生を支えることに使いたいと考え、またそれを思うだけでなく実際に行動に移すことができる、誇るべき存在である人物が、1人また1人と集まって、結果、現在1000人を超える人がその行為に勤(いそ)しんでいる、と表現できると考えます。

アテンダントの一人がワーク&バランスを考えているとき、別の方は同僚との人間関係で悩んでいるかもしれないし、またある別の方はスキルアップを目指し資格取得の勉強をしているかもしれません。
今日は体調がいまいちよくなく、いつもなら気にも留めないことでイライラする方がいるかもしれないし、また、誰かが言ってくれた「ありがとう」で心が晴れた1日がある方もいるかもしれません。

右肩上がりの売上のグラフの形だけをみて、「上手く行っている」「問題がない」と胡坐をかいていれば、人が見えなくなり(見ようとしなくなり)ます。
数字やデータが表すものはある断片、ある側面でしかなく、その内側には、悲喜交々、喜怒哀楽様々な感情や熱意、落胆やそれを再び奮い起こす情熱といった、精神や身体の躍動する一人一人の人生が存在しています。

それをないがしろにできる人物に、社会を、組織を、コントロールして欲しくはない。
皆さんもそう感じていらっしゃるのではないかと私は勝手に考えています。

人が見えない人物の言葉が働く人を動かすはずもなく、「福祉」をかかげていながら、気持ちを汲み取られないと感じられてしまったら、辻褄が合わず、献身的に働くはずだった人たちの中にモヤモヤが溜まり、心が離れればやがて体も離れ、その組織は遅かれ早かれ、綻びが生じ、大小の機能不全を起こし始め、やがては組織全体が崩れるのが目に見えています。

私たち株式会社土屋が支えるのは、命であり、クライアントをはじめとしてその家族や関係者、その他大勢の人生です。そして、このように多くの人生を支えようとすること、つまり今、株式会社土屋で働くあなたは、どこのポジションにいても「社会を支えている」のだ、ということです。

大袈裟だと感じるでしょうか。
「優しさを誇らしさに」とは、社会全体といった大きな規模の視点でも語られる言葉なのです。

では、より良い組織づくりのために会社が何をやっていけば良いのか、既に取り組んでいることも含め、ほんの一部になりますが、改めて書いていこうと思います。

会社がスタートして、半年が経過しました。繰り返しになりますが、僅かな期間にも関わらず従業員は1,050名を超えようとしています。これは、採用人事チームが事業部を主体とし、ぶれることなく採用に取り組んでくれた証だと思っています。
聞こえのいい話で求職者を「釣る」というようなことをせず、土屋の採用チームは、あくまで実際採用された方が、求人記事に記載される文言と実際のお仕事とのギャップを感じることのないように配慮した言葉を綴り、信頼関係を醸成しながらお仕事に入れる流れを丁寧に作りました。

正々堂々と自分たちの仕事の内容を伝えて、それを受け取ってくださった方が応募し、共に働いてくださっているわけで、言ってみれば

「自分たちの仕事に嘘をつかない」

ということです。

誇張することや、必然的に起こる苦労が予想される部分などを隠すことは、自分たちの仕事に嘘をつく行為になりかねません。
嘘で釣らなければならないほど、私たち介護の仕事は卑しいのでしょうか。むしろ逆です。
私たちは真面目に、正直に、法的正当性に沿って運営するという、当たり前に守られて欲しいことをまさに真っ当に行っています。

「狡さ」はいかなる人にもいかなる時にも滑り込む余地があるものだと思います。
もし、出会いの一番最初にそれを隠して始まった付き合いであれば、時間が経つにつれ、隠していた矛盾は日毎、大きくなっていきます。
この、狡さが生じるきっかけを、せめて「私たちの側から作るべきではない」と考えたからこそ、煽り文句や、釣り文句、過剰に甘い言葉などを求人の時点で使わない配慮をしました。

当たり前のようでいて、現代において当たり前でないことの、是正に努めたということになると自負しています。

土屋に既に入って下さった方達のためには、近く「サンクスツール」なる仕組みも稼働し始めます。
足の引っ張り合いや、陰口のような卑怯さを、働く人の間に蔓延させないために、取締るようなことではなく、「称賛し合える社内文化」をエネルギー源にできるような仕掛けを取り入れました。

訪問介護というお仕事が主軸なので、「直行直帰」、「一対一の支援」でどうしてもコミュニケーション不足に陥りがちです。実際これまで、訪問支援の現場から誰にも褒められない、寂しい等の気持ちをお聞きすることもありました。

もちろん、ツール導入に加え、従業員ひとりひとりの声を聞ける場(1on1面談)の設定も必須だと考えています。
仕組み、ITの力を借りながらも、基本的には、「人と人とが向き合う」という本質は変わらないものです。
評価等とは別に気軽に思っていることを言える場の提供は、命を支えてくださる方に対する最低限の礼儀かと思います。

また、先日発足したシンクタンク部門・土屋総研は介護・福祉の現場で起こる様々な困りごとや、法的不調和の実態をデータ化し、まさに今このとき命を支える現場に居合わせる皆様の働きがさらにより良いものになるべく、さらに不安のないものになるべく、皆様を代表して国へ提言させていただく役割を担う部門です。そして、土屋総研の動きは随時働く皆さんに共有されていくかと思います。

さらに、社内研修には今日の現場で、即すべての人に役に立つかどうかわからない、というものもあるかとは思いますが、新しい視点や、また改めて学ぶことでひらける展望もあると考えています。
「もっとこういう研修をしてほしい」「こんな技術、知識を学びたい」といったご意見も、是非お寄せください。

埋もれてしまう意見の中に、多くの人を救う何かが生まれるきっかけがあるかもしれません。むしろ、この障害者福祉は、そうやって「声なき声」と言われながらも確かにある声を掬い、より合わせてここまで進んできたのです。クライアントもアテンダントも働く人のポジションも関係なく、皆様の声は、紛れもなくその道の上に今立っていると思います。

今回、「より良い組織づくりのために」というテーマで文章を書くにあたって、改めて人あっての会社であることを再認識しました。またそれぞれの人生を思い浮かべる時間にもなりました。「交響圏」という言葉を持つ意味を意識し、皆様と一緒に創り上げる組織でありたいと思います。

 

◆プロフィール
長尾 公子(ながお きみこ)
1983年、新潟県生まれ

法政大学経営学部卒。

美術品のオークション会社勤務後、福祉業界へ。通所介護施設の所長や埼玉の訪問介護エリアマネージャーを経験し、2017年、出産を機にバックオフィス部門へ。現在は3歳と0歳の子育て中。

 

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