地域で生きる/21年目の地域生活奮闘記⑨ ~再びの緊急事態宣言に思うこと~ / 渡邉由美子

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

2度目の「緊急事態宣言」が発出されたという報道が、一日中垂れ流し状態で流れています。

コロナウイルス感染症の罹患者が全国で大晦日あたりから爆発的に増加し、医療体制のひっ迫状況に歯止めがかからず、もうすぐ一年を超える、この目に見えぬウイルスとの闘いにみんな疲弊を極めているのです。

その一方で、YouTubeやTwitterなどから入ってくる情報によると、そんなに怖がる必要はないとも言われています。基本の感染対策をしっかりしていれば、普通の生活は送ってもよいという説も浮上しています。

新型コロナウイルス感染症のことだけでなく、マスコミがこぞって報道する情報というのは、何をどこまで信用してよいのか本当に考えさせられる今日この頃です。

今回は飲食ばかりを悪者のように攻撃する形で緊急事態宣言が出されました。そして、若者の行動が感染を拡大させているという結末にもっていかれています。

確かに心して気をつけなければいけないことは確実ですが、報道のあり方に大きな疑問を感じてなりません。

今、国は、生きるために時短要請を守りたくてもできない人たちからも罰則金を取り立てる特措法の改正に躍起になっています。弱い者いじめのようにしか私には見えてこないのです。

そして重度の障がいを抱えている仲間のなかには、言語障害や唾液の誤嚥などの理由で、普通にしていても咳込んでしまう障害を伴う人もたくさんいます。

喘息の持病を持っている人は「喘息です」と書いた紙を身につけて歩かないと、公共交通機関には乗れない事態になっています。

知的障害や脳性麻痺の不随意運動のために、どうしてもマスクをすることが難しい事情を抱えた仲間もいます。

酸素ボンベを引いて歩かないといけないような、元々酸素が足りない病気の方たちは、マスクをすることで低酸素状態が加速して死ぬ思いだと訴えておられました。

どうしてこの社会は、個人の事情を認めあい、尊重し合い、多様性を認めることがここまで難しいのでしょうか。

何かが起こると必ず非難・差別・誹謗中傷を受け、矢面に立たされる人が出てきてしまうのです。

この負の連鎖をどうしたら断ち切れるのでしょうか。

現在は新型コロナウイルスにまつわる世の中の負の部分が目立っていますが、障がい者差別や津久井やまゆり園事件も根っこは同じ問題なのだと思います。

日本の国はコロナウイルスを封じ込めるという名のもとに、その裏で何を実行しようとしているのでしょうか。そしてこの一連の騒動が収まったときに、どんな世の中になっているのでしょうか。

明けない夜はないので、いつしかこの状態も収束をみるのでしょうが、その間に失業者が増え自殺者が増え、我々重度障がい者の社会保障費は削られる世の中が着々と構築されているようにしか思えないのです。

今、飲食が職業として成り立たないのであれば、エッセンシャルワーカーである介護職に転職しようという人が増えてきていると報じられ、介護人材バブルとまで称している人もいます。

しかしながら、講習は受けに来ても現場定着をする人は1割に満たない状況であることを、私は日々の社会参加活動の展開のなかで骨身に沁みて体感しています。

砂の中から金塊を探すような重度障がい者とのマッチング作業を地道に継続する中で、重度障がい者は雲をつかむような思いをしながら地域で暮らすための介護者確保を毎日しているのです。

そしてもっと不思議なことは、私には全く知識がないのでなぜそのようなことがこの不景気を重ねている時代に起こるのか分かりませんが、株価はコロナ収束を見越して30年以上ぶりに高騰し高値となっているのだとかいうニュースが耳に入ってきました。

その高騰によって、一部の人は富を確実に得ていることになるのです。

株価だけではなく、マスクやアルコール消毒剤を製造販売する会社や、テレワークに関わる会社は、なかなか思うように進まなかったテレワークがこんな形で恒久的に定着しつつあり、これもまた大きな富を得られる職種となっているのです。

テレビで新型コロナウイルスのことを繰り返し繰り返し伝えている大学関係者や医学評論家もその一人なのですが、聞いていると私でもそんなことなら言えるという内容が多く話されているのを考えると、その富をなんとか本当に困っている人に分配できるシステムは無いものかと考えるのです。

これからの社会を生き抜くことは、障がい者でも健常者でもますます大変なことです。長いウイルスとの闘いになりますが、だんだんメンタル面への影響も軽視できなくなってきました。疲れ果てることなく生きていきたいものです。

そして重度障がい者の地域生活介護を支えている介護者の皆さん、申し訳ありませんが、私たちは介護者なしには生きていけないので、こんな厳しい情勢でも是非介護を休まず続けてください。

あなたたちがいなければ、重度障がい者はコロナウイルスと関係なく死に絶えることになるのです。

障がい者も勿論、最善の注意を払って生活します。外出はほとんどしません。どうぞ支え続けてください。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

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