高浜敏之代表が物申す!シリーズ⑤

株式会社土屋の2周年創立記念日(8月19日開催)に添えて

 

本日無事に2周年を迎えることができたことに、ある種の驚きを感じます。

また、ここまで無事に乗り越えてきたことについては、皆さんのご尽力ご努力等のお陰でもあり、心から感謝申し上げます。本当にありがとうございます。

まずは、自分たちの「記憶を振り返る」ことの意義について再確認したいと思います。

この時期(8月)は私たちが、そして日本国民が、場合によっては世界市民が「広島・長崎」の悲劇について思い出す大切な時間でもあり、その延長線上として「アウシュビッツの記憶」についても振り返るような時期ではないかと思います。

私自身においては、先日、Twitterにて弊社取締役CMO・岡田千秋のお父様に被爆経験があることを知りましたが、同じ長崎県にいた私の父も、直接被爆はしていないものの強烈な原爆の光が山の向こうに差したのを見た経験者でもありますし、親戚では複数名被爆者がおります。

あの日、広島では14万人、長崎においては7万人、そして、アウシュビッツでは100万人以上の方々が命を失いました。私たちは「人類の歴史」の中での「負の記憶」を決して忘れてはならないと思っております。

こうした記憶を振り返ることの、言うまでもない「意義」とは、二度とそのような悲劇、過ちを「繰り返さない」ということと、そうではない「別の道を歩んでいく」ということ。この2点こそが「記憶を振り返ることの意義」であり、また、その方向性に対する「決断」を深める時間でもあります。

私個人としては、15年前の4月に、長年にわたるアディクションからの解放を決断して、その後1日1日回復の道を歩んできておりますが、毎年、場合によっては毎月、それ以前の歴史を繰り返さないという決断を深める時間を自分の中に設けています。

私たちが「振り返る」ということはとても大切なことです。

何故ならば、私たちが性懲りもなく繰り返さざるを得ない生き物、動物であり、その間違ったパターンを繰り返してしまうという反復強迫は、決断し続けなければなかなか解放が難しいからです。

私たち(株)土屋のメンバーとしては、この日をもってこの「繰り返さない」ということと「別の道を歩んでいく」ということの決断を新たに深めていければと思っています。

そもそも、私たち(株)土屋という会社がどのような会社なのか。初めから共に歩んできた方もいらっしゃれば、中には途中から参加した方もいらっしゃいますので再確認させていただきます。

(株)土屋はある種、特異な企業体です。

まず一つは、私たち重度訪問介護を提供する事業者が障害者運動を始めとした「人権回復運動」にルーツを持つ企業であること、これ自体が非常に珍しいことだと言って良いでしょう。

また、そんな私たちが、精鋭的なビジネスモデルと障害者運動の精神が込められた重度訪問介護サービスという、本来ならば出会いようがないような二者、二つの要素が化学反応を起こして生まれた特異性をもったグループだということ。

三つ目に、この重度訪問介護サービスにおいてすでにリーディングカンパニー、最大手だった前会社にいた私たちが2年前、方向性の違いなどからスピンアウトして、ある種のリスクを引き受けながら生まれ、その後幾多の障壁を乗り越えながら今日に至るという点についても特異性があると考えます。

そしてそのリスクは、私個人が、共に歩むことを決断した皆様が、そして(株)土屋という共同体が引き受けるリスクでした。私たちが、このように特異的であるということの認識は共有していく必要があると思います。

そんな数々のリスクがあったにも関わらず、私たちがこの道を歩まざるを得なかったことについては、さまざまな背景がありました。私たちの歩みそのものに対する批判から、これだけは守りたいという価値を再確認することにもなりました。

非常に厳しい現場を担う中で、私たちがこの仕事を続けていける最も大切な条件は、この職場全体の「心理的安全性」の保障、お互いがお互いを尊重し合い、環境を維持していくということ。そして、働いている方々が利益を得るための手段として駒のように使い捨てられるのではなく、自分自身が存在として大切にされていると確信できるような基本的信頼が根付いた環境を作っていくことです。

前述したように、私たちのルーツは「人権回復運動」です。サービスを受ける方々が、サービスを受けることによってノーマライゼーションが実現されるということ、つまりサービスを提供する事業そのものが目的であり、その結果として生まれる利益や会社の資産は、このサービスと事業を維持するための「手段」です。この「目的と手段の転倒」を絶対にしないということです。

現場へのリスペクト、心理的安全性、サービス自体が目的であり利益と資産は結果であり手段だ、というこの3つの価値観を守ることが私たちの方向性であり、これを守れなければ私たちがリスクを引き受けて前進した意味はないのです。

以前のままで良かったのであれば、リスクをとる必要はなかったのです。それ故、この3つの価値観は絶対に守らなければいけないということを改めて確認させていただきますが、しかし同時に、これはとても難しいことでもあります。

事業を推進すると、どうしても利益が出ないと成り立たなくなるような「現実」があり、利益に関心を持つと、いつの間にか手段だった利益が目的になってしまうことがあります。

私たちは崇高な理念とビジネスを継続・発展させるという目標に向かって邁進していますが、人が目標に注目したときに時として共に歩んでいる人たちに対して冷酷になってしまうことがあります。配慮できなくなり、優しくなれなくなる、それは「人間の性」だとも感じます。

もしかするとマネジメントを担って下さっている皆さん、管理部門の皆さんにとっては、なかなか説明しても理解してくれない現場との間でコミュニケーションの不都合を感じることがあるかもしれません。そんな時に、心無い発言が出てきてしまったり、想いが湧き上がることもあるでしょう。

私たちが着手していることは、常に自分自身を見張り続けなければ実現できないような難しい取り組みだということも再共有したいと思います。

最後に、この2年間の経営者としての「自己点検」ですが、私個人としては「60点」です。

その理由は、2年目のこの創立祭の時間をしっかりと持てていること、ここまで到達できたということでは自分自身、私たち自身、十分評価していいのではないかと思っています。

というほどに、ここまで辿り着くのは簡単ではない道のりでした。

一方で、個人的に、経営者という職業の経験と知識が不足していたことで数々の判断ミスをしてきたという自覚があります。また、スタートした時は理想主義を掲げ(今もそうですが)、今までとは「180度」違う在り方を目指したいと考えていましたが、私自身の振り返りとしては「18度」しか違わないような会社運営になっているという自覚もあります。とはいえ、もしかしたらこれで半分は良かったのではないか、というようにも思います。

この180度変えたかったのに18度しか変わらなかったことの理由は、私たちには「新しい上司」がいたということです。それが、さまざまなステークホルダー、特に金融機関の方々でした。

企業体の経営では、毎月利益が出ているからといって銀行口座の預貯金が毎月増えていくものではありません。

弊社は毎月ほとんど利益を出していますが、銀行口座にあるお金は毎月減っていきます。不思議な現実ですが、会社が維持・発展・運営され続けるためには、毎月利益を出し続けているだけではなく、しっかりと「資金を確保し続ける」ということが必要なのです。

その資金を提供してくれるのが金融機関です。そしてこの金融機関はタダではお金を貸してはくれません。「約束」を求められます。これをやってくれたらお金を貸しますよ、という当然の約束を求められます。

銀行からお金を貸してもらえないということは、企業にとって「死」を意味します。特に立ち上がり段階の企業にとっては。

約束を守らなければいけないということが、私たちが思っていた理想を実現することとトレードオフ関係になる場面をこれまでに複数回経験してきました。

これが、180度ではなく18度の変化しか生み出すことができなかった理由の一つです。

しかし妥協することなく、明日は19度、明後日は20度、半年後には30度違う在り方を目指していきたいと、中間管理職としての代表取締役の自覚が私にはあります。

最後に、3年目の抱負ですが、まずは先ほど述べたような過ち(私自身もその一端を担っていたというところもあります)を繰り返さないという決断を続けること。そして、MVVを追求し、介護難民問題の解決に引き続き尽力し、特にバリューの浸透によって会社全体の安全性が回復していくような取り組みを継続していきたいと思います。

また、現場へのリスペクトとその想いを形にするために、賃上げ、福利厚生、コミュニケーションの機会の創出を、経営体力が付いていくに応じてしっかりと進めていくこと。

私たちが取り組んでいる社会的倫理価値の持続継続の為に、経営体力を強化する必要が引き続きあると思います。また、皆が新しいことに挑戦できる企業、成長できる企業、そして自分が所属している共同体に対しても信頼と誇りを抱けるような、それに値するような企業で在り続けるということを、皆さんと一緒に進めていきたいと思います。

株式会社土屋
代表取締役 高浜敏之

 

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