26年目の地域生活奮闘記 ―津久井やまゆり園事件から10年、今改めて思うこと―/渡邉由美子

津久井やまゆり園事件から10年が経ちました。しかし、私には「あれからもう10年も経った」とは、とても思えません。
あの事件は、精神障がいのある加害者による特殊な事件として語られることが少なくありません。

しかし、私はそのように片づけてしまってはいけないと思っています。加害者個人の問題だけとして終わらせるのではなく、事件の背景にある社会のあり方や、本質的な課題に目を向け続けることが必要ではないでしょうか。

私が考え続けている大きなテーマの一つは、「障がいが重い人が、どうすれば地域で当たり前に暮らせるのか」ということです。
地域で暮らすことが容易ではない社会だからこそ、施設という閉ざされた環境の中で、あのような事件が起きてしまったのだと思います。

もちろん施設だけを責めることはできません。事件は社会全体の課題を映し出したものだったのではないでしょうか。
今こそ、障がいのある人が地域で生きるということを、根本から考え直す時期に来ているのだと思います。

国連も障害者権利条約の考え方の中で、入所施設中心ではなく、地域で暮らすことを保障する社会への転換を求めています。
私は入所施設そのものを否定しているわけではありません。

しかし、障がいがあるという理由だけで、多くの人とは異なる生活を強いられることは、決して当たり前ではないと思っています。

ここでいう「普通」とは、一つの価値観を押し付ける意味ではありません。私が言いたいのは、障がいのない人なら当たり前にできることを、障がいが重い人も同じように選択できる社会であってほしいということです。

例えば、外出したいと思ったときに、その都度許可を取らなければ外へ出られない生活ではなく、「今日は天気がいいから散歩に行こう」「少し気分転換したい」と思ったその瞬間に出かけられること。

食べたいものを、食べたい時間に食べられること。寝る時間や起きる時間も、その日の体調や気分に合わせて自分で決められること。
お風呂も曜日や順番で管理されるのではなく、「今日は入りたい」と思ったときに入れること。そのような、ごく当たり前の日常が保障されることだと思っています。

もちろん、重い障がいがあり、人の手を借りなければ生活できない人にとって、それを実現することが簡単ではないことは十分理解しています。
しかし、日課が細かく決められ、個室になったとはいえ、施設の中だけで生活が完結してしまう暮らしは、やはり本当の意味で普通の生活とは言えないのではないでしょうか。

建物が新しくきれいであったり、バリアフリー設備が充実していたりしても、それだけで満足できるわけではありません。
本当に大切なのは、自分らしく生きられることだと思います。

私は自分の意思を比較的はっきり伝えることができます。そのため、希望を理解してもらいやすい面があります。
しかし、意思を言葉で表現することが難しい人や、何を望んでいるのかを周囲がすぐには理解できない重い障がいのある人もいます。

医療的ケアが必要な人も、高齢になった人も含め、どのような障がいがあっても、自分らしい暮らしを実現できる社会をつくっていきたいと考えています。

では、なぜそれが実現できないのでしょうか。
私は、地域に障害福祉の専門性を持った人がまだまだ少ないこと、そして障がいのある人と日常的に関わる機会が少ないことが、大きな理由ではないかと感じています。

そしてその背景には、分離教育があるように思えてなりません。私は幼稚園までは、姉の影響もあり地域の幼稚園に通っていました。
しかし、小学校へ進学する際、「身辺自立ができていない」という理由で地域の学校へ通うことは難しいと言われ、養護学校へ進学しました。

そこから、障がい者と健常者が別々の環境で育ち、生活することが当たり前のルートに乗せられてしまいました。

私はそのことに疑問を持ち、別の生き方を選びました。地域生活を始めて今年で26年になります。
重度訪問介護制度を利用し、24時間体制で多くの介護者の支援を受けながら暮らしています。

喉が渇いたときに何を飲みたいのか、その瞬間に何をしたいのか、一つひとつ自分で決めながら生活しています。
また、排泄についても、おむつを使えば介護の負担は軽くなると考える人もいるかもしれません。

しかし私は、できる限りトイレで排泄をすることにこだわって生活しています。
それも私にとって、自分らしく生きること、自己実現の一つだからです。

津久井やまゆり園事件では、多くの職員が勤務していたにもかかわらず、職員自身が拘束されてしまったために十分な対応ができず、多くの命が失われました。このような悲劇は、決して津久井やまゆり園だけの問題ではありません。
同じような環境があれば、第二、第三のやまゆり園事件が起きる可能性は、どこにでもあるのだと思います。

だからこそ、どうすればそのような悲劇を繰り返さない社会をつくれるのかを、これからも考え続けていきたいと思います。
地域の中でさまざまな人と関わりながら、一人ひとりが自分らしい生活を築いていける社会。

そして、意思表示が難しい重い障がいのある人であっても、その人らしい暮らしを実現できる地域社会を、皆さんと一緒につくっていきたいと心から願っています。

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を精力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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