医療隣接行為研究委員会

医療隣接行為研究委員会 委員長メッセージ

平成24年より介護職員は利用者に対し、喀痰吸引等研修を修了するなど一定の条件の下で、医療行為である喀痰吸引並びに経管栄養を実施できるようになりました。いわゆる「医療的ケア」と呼ばれるものです。
しかしながら、訪問介護の現場においては、医療的ケアの周辺行為の実施のニーズがあり、介護職員がその周辺行為を医療的ケアの延長として実施せざるを得ないことが多々あります。

土屋グループでは、これら喀痰吸引等研修の修了項目に含まれていないものの、介護現場では実施のニーズがあり、本来なら医師又は看護師が実施することが望ましいとされる行為を医療隣接行為またはグレーゾーン行為と呼んでいます。

介護職員がこうした行為を実施することについては、厚生労働省も課題感を示しており、平成17年と令和4年に、医療隣接行為の列挙並びに当該行為を介護職員が行うに当たっての注意事項の通知を発布しました。しかしながら、当該通知に掲出されている行為以外にも介護現場で行われている医療隣接行為はまだまだ存在しています。

従来、医療隣接行為は、重度障害者・難病患者の方々が在宅生活を送る上で実施の必要性があり、かつ利用者が介護職員に対してその実施を望む場合には、利用者・介護職員・事業所の三者がいわば黙認する形で実施されるものでした。この黙認は、当該行為の実施を公にすることで、行為の実施自体が否定され、それにより利用者の在宅生活の質が低下したり、場合によっては在宅生活そのものが難しくなることを恐れての、決して望ましくないものの致し方ない手段でもありました。

さらに、最も危惧されることが、介護現場での医療事故です。医療事故の発生する確率は、実施している医療的ケア並びに医療隣接行為の量に比例すると考えられるため、医療的ケアの必要な利用者が多数いる当社の場合は、医療事故が発生しないよう細心の注意を払わなければなりません。また万が一医療事故が起こった場合は、利用者の身体と生活に重大な被害をもたらしてしまうのと同時に、職務として医療的ケアと医療隣接行為を実施する介護職員が医療事故の責任を問われる可能性が否定されないということも分かりました。

こうした背景を抱えるにおいて、当社は、重度障害や難病を抱える利用者の在宅生活の支援に医療隣接行為が必要なのにもかかわらず、介護職員がその行為を実施することが公に承認されていない現実に誠実に向き合うことにしました。

設立以来、このテーマについて社内の有志が協議を重ね、また顧問弁護士にも相談してきた成果として、医療隣接行為については、実施しないで済む方法があるなら実施しないことを選択し、実施せざるを得なければ、①土屋の承認フローを順守すること、②クライアント(=利用者)の同意を得ること、③医師または看護師からの定期的な技術指導の機会をもつこと、④クライアントの緊急時の連絡体制を整備することを要件とし、これらを満たした場合に限り実施を容認する、という指針を掲げるに至り、指針の整備と併せて医療隣接行為研究委員会を発足することとなりました。

当委員会は、当社における医療隣接行為の実態を把握しながら、新たに申告のあった行為のリスク判定を行い、承認フローを実行するとともに、医療隣接行為のより安全な実施のために、審査会や勉強会を実施していく所存です。そして、医療隣接行為の実施を、アテンダント(=介護職員)と事業所に一任せず、当委員会がそのモニタリングの役割を担うことで、クライアントが一日でも長く在宅生活を送れることを目標としています。

医療隣接行為研究委員会
委員長 吉岡理恵

 

TOP