地域で生きる/22年目の地域生活奮闘記100~デジタル庁がマイナンバーについて言っていることについて思うこと~ / 渡邉由美子

ここ最近マイナンバーカードを作ることを半ば強制のように政府は宣伝し、最大2万円分のマイナポイントがもらえるうちに作るよう執拗に促しています。

作る・作らないは最終的には個人の自由だし、それを普及させることによってきっと便利な世の中も訪れるのかもしれません。しかし、重度障がいを持ち、書類などの作成を自分ですることが困難な人たちに対する配慮の話は、私が知る限り一つも表面化されていません。

先日、そのようなことに長けている支援者がいる時に、勢いで手続きすれば一つ懸案となっている仕事が片付くのかなと思い、やってみてもらいました。そのまま最後までやれば、私本人が理解している・していないに関わらず、マイナンバーカード制度に納得と理解をしたということになり、手続きは事務的に進んで完結していくことになるのかもしれません。

しかし、内容をしっかり理解できていない状況で最後の手続きまで進むのは怖いですし、マイナンバーに紐づけしようと思われる口座もすぐにはなかったため、途中でパソコンで行っていた手続きをやめ、区役所などの公の機関にもっと突っ込んで聞いてから手続きをしようかと思っています。

マイナンバーは誰にとって必要な手続きなのでしょうか。それが、私が即日申請を躊躇した最大の疑問です。皆さん忘れてしまったかもしれませんが、住基ネットというマイナンバーに似た制度があり、そのときも全国民に番号をつけて国民を管理しようとしていたことがあるのです。それは志半ばでたちぎれてしまいました。

目先の2万円分のポイントがもらえるということにメリットを感じたり、飛びついたりするのは一部の若者層の小学生の頃からタブレットやパソコンに慣れ親しんでいる人たちだけであって、視覚に障がいがあったり、知的に障がいがあったり、私の様に知的能力は劣っていないはずなのだからデジタル社会についていきなさいと強制されると気後れしてしまう人も含めて、取り残されていく人間たちを政府はどんどんと切り捨てる政策ばかりしているように思います。

ついて行けない人間は劣る人間であって、いらない人間と言われているように感じてならないのです。メリットを永続性のあるものとしてかみ砕いて説明してくれるわけでもなく、管理社会を押し付けられている感じがしてならないのです。

その社会が整ったとされるときに手続きをしていないから、健康保険証を使えず、医療も受けられず、人知れずまた人が亡くなる社会が作り出されていくような気がしてならないのです。

広報に努めているとか十分な説明を行き届かせてとか、こぼれ落ちる人を作らないようにとニュースで盛んにきれいごとを訴えていますが、少なくとも私はこのマイナンバーカードのことについてしっかり理解できてはいません。

マイナンバーカードを作り、マイナポイントを得るために口座の紐づけも必要なため、ネットで口座はあっても困らないから口座を作ろうとしたら、その条件は健康保険証、マイナンバーカード、運転免許証のうちいずれか2点が無ければいけないというものでした。

インターネットに新たな口座を開設しておくこともすぐにはできず、忙しい時間を縫って窓口のある店舗がとても少なくなっている銀行に、足を運んで新しい口座を作ることをしなくてはなりません。こんな手間暇がかかるとわかっただけでやる気は一気に失せました。

今、様々なことで政府に対する信頼は毎日下がる一方です。情報漏洩は絶対にしないと一生懸命マイナンバーを作ることを、あたかもこれ以上に無い良いことのように言っていて、手続きしない人は今後生活が不便になっても自業自得だと言わんばかりです。

しかし本当に漏洩しないのでしょうか。電子通貨も安全便利と言っていながら今までいくつのトラブルがあって何回頭を下げる記者会見をしたことでしょう。そして大手都市銀行のATMのシステムトラブルも記憶に新しい所です。

繰り返しになってしまいますが、世の中にはいろいろな人が住んでいてその人たちが同じ社会の中で共存したいと願っているのです。新しい大きなことをするときにはどんな人にも理解納得が出来て、その便利さやメリットをみんなが共有できる体制を構築してから物事を進めてもらいたいと思います。

電子マネーが普及して無人コンビニが便利とされる世の中で、ガイドヘルパーをつけなくても1人で外出の出来る視覚障がい者は喉が渇いても飲み物1本自分で購入するのが難しくなり、我慢をして生活することが多くなったと嘆いていました。

もしそういう社会になったのだからと、それに人が追い付くことを本当に求められるとするならば、就労時のガイドヘルパーや重度訪問介護はつけられない制度の制約も一緒に廃止してほしいと思わずにはいられない今日この頃です。

私は、マイナンバーカードの批判をここに書きたいのではなく、手続きの段階から取り残される人の存在にも光を当ててもらえるような政府を取り戻してほしいという思いから、この文章を書かせていただきました。

円安が日々加速する中で死者がたくさん生み出されています。そのような中でやらなければならないことは沢山あるような気がしてならないのです。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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