
あの日、私は介護を教わった
「経験年数よりも、誰かを助けたいという、あたたかく真摯な気持ちと利用者の生活を支える責任感こそが最も大切」
本書を読み進める中で、この言葉が深く心に残りました。読み終えた今でも、何度も思い返してしまいます。
それは、この言葉が、私の介護の現場で経験してきた出来事と重なったからです。
私は重度の障害を抱える方の介護に携わっています。
身体を自由に動かすことができず、言葉を発することができない利用者の方と日々向き合っています。
そのような方とのコミュニケーションでは、言葉を交わすことも大事ですが、『伝えたい想いを受け止めようとする姿勢』の方が何より大切だと感じています。
介護を始める前の私は、正しい介助ができることが信頼につながると思っていました。
教科書どおりに介助を行い、失敗しないことを第一に考えていたのです。
しかし、ある女性の利用者との出会いが、その考えを大きく変えました。
その方はALSという病気を患い、人工呼吸器を装着し、自ら動かせるのは目だけでした。
意思疎通は透明文字盤を使って行ないます。
初めて支援に入った日、訪問看護師による摘便の場面に立ち会いました。
男性である私がその場にいることに、その方はどんな思いで耐えていたのだろう。
その姿を見た瞬間、胸が絞めつけられ、涙がこぼれそうになりました。
その日、私は心に決めました。
「この方のつらい時間を少しでも減らしたい。」
「少しでもストレスを減らしたい。」
「生きていて良かった、幸せだと思える時間を一つでも増やしたい。」
それからは、目の前の利用者にとって何が一番良いのかを考え続ける毎日でした。
オムツ交換は少しでも負担が少なく済むよう、丁寧さと速さを追求しました。
透明文字盤も何度も練習し、少しでも円滑に意思をくみ取れるよう努力しました。
そして、『何をしたいのか』『何を実現したいのか』を繰り返し伺い、その思いを形にできるよう力を尽くしました。
それが正解だったのかは分かりません。
それでも、相手を理解したいという気持ちを忘れず、一つひとつ積み重ねていくうちに、気がつけば深い信頼関係を築けるようになっていました。
もちろん、今でも分からないことはたくさんあります。
だからこそ、『もう分かった』と思うことはありません。
会うたびに新しい気持ちで向き合い、その人を知ろうとし続けています。
だからこそ、本書の冒頭の言葉が胸に響きました。
経験年数が長いことよりも、誰かを思い、責任を持って真摯な気持ちで向き合い続けること。
その姿勢こそが、人との信頼を育てていくのだと、私は実体験を通して学びました。
人は他人の心を完全に理解することはできません。
しかし、理解したいと願い、そのために考え、耳を傾け、相手を尊重し続けることはできます。
そしてその先で気づいたことがあります。
利用者の方を、介護をする相手としてではなく、『一人の人間』として向き合うこと。
それこそが介護の本質なのだということです。
本書は、介護の知識や技術を教えてくれる一冊ではありませんでした。
介護という仕事の原点を改めて思い出させ、私自身の在り方を見つめ直すきっかけを与えてくれる一冊でした。
「売上や利益も大切だが、それが最優先であってはならない」
高浜代表のこの言葉にも深く共感しました。
利用者を第一に考えたいという想いを持つ介護職にとって、「その想いを大切にしていいのだ」と背中を押してもらえたような気持ちになりました。
これからも私は、目の前の一人の人と誠実に向き合い続けたいと思います。
そして、相手を理解しようとする姿勢を忘れず、この仕事を続けていきたいと思います。





















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