
出帆から航海へ—その船に乗った一人として/古本 由美子(CSR協議会サポート部)
この本を手にしたとき、期待と緊張が入り混じったような、不思議な気持ちになった。
それは私自身、創業メンバーの家族としてその船に乗った一人であるからだ。
起業前から知っている方も多く、ページを開くと、よく知るその人の声が聞こえてくるような気がして、懐かしさと胸の奥がじんとする感覚の中で、ゆっくりと読み進めた。
最初に手が止まったのは、代表と副社長が銀行を周り資金調達に奔走し、最終的にファクタリングを活用し、身を挺して会社を立ち上げたという記述を読んだときだった。
我が家も、些少ではあったが持っていた預金すべてを託したときのことを思い出した。
メンバーへの全幅の信頼があったからこそできたことで、失敗はしない、いや、できないという状況でもあった。
ページの向こうにあるあの頃の緊張感を、そのまま追体験するような感覚だった。
そうした覚悟のもとに集まった15人は、それぞれまったく異なる動機でこの事業と出会い、退路を断ち、「新生土屋」を立ち上げた。
福祉への使命感を持つ者、偶然の縁に導かれた者、自身の生きづらさを抱えた者。
それぞれの物語は異なりながら、「小さな声を見逃さない」という一点で静かに交わっている。
人はこんなにも違う道を歩みながら、同じ志に辿り着けるのだと、深く胸を打たれた。
また、「それぞれが難しい問題を抱えながら、乗り切ろうという空気があった。
全員が必死に努力して踏ん張って、今の土屋にしてきた」と書かれているのを読んで、「個」が躍動するとはこういうことだと、静かに、しかし深く、腑に落ちた。
そして同時に、鞆の浦での決起大会で土屋号が「出帆」するとき、その旗に皆で寄せ書きをしたのを昨日のことのように思い出した。
皆さんが踏ん張ってきたからこそ今の土屋グループがあり、「小さな声」を拾い続けてきたからこそ、今私たちがここにいることができる。
この本を読みながら、私自身のことも重ねていた。
元々介護福祉士の資格は持っていたが、土屋に入社してから、もっと福祉に関わるための知識が必要だと感じ、福祉系の大学に通い始めた。
仕事の中でさまざまな人と出会い、共生社会への理解が深まるにつれ、人として成長できているように思う。
この組織は、働く人一人ひとりをそういう場所へと連れていってくれる。
そのことを実感させてくれるのが、本書の中でいくつもの言葉が深く響き合う瞬間だった。
「利用者のQOL・スタッフの満足度・組織レベルの向上」。
「土屋が持つ文化、価値観で一番大事なものは社会性」。
「従業員がこの会社で働けてよかった、クライアントがこの会社に頼んでよかった、ステークホルダーがこの会社が存在していてよかったと思えるかどうかが会社の未来を作っていく」。
書いた人も立場も時期も違うのに、これほど響き合う。
大きくなって変化し続けてきたけれど、大切なところは変わらない。
この会社に関わってきてよかったと、心から思えた。
さらに読み進めるうちに、言葉と思想が組織文化をつくるのだとも感じた。
「クライアント」「アテンダント」「新生土屋」、こうした言葉の選択は思想そのものの表れであり、その積み重ねが今の土屋グループをつくってきたことを確信している。
文化は、人から人へと手渡されるものだ。
高浜敏之代表がこの本を残そうとしたのは、創業時の記憶を残すことが会社や介護・福祉業界にとって有益だとお考えになったからだ。
「つながりあいささえあう場を永続的に創造する」という責任を、言葉として刻み続けるために。
その一冊を受け取った今、私も次の語り手の一人でありたいと思っている。胸に刻みたい。





















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