地域で生きる/21年目の奮闘記㉝~雨にも負けず、風にも負けず行われる社会参加活動~/ 渡邉由美子

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

もうすぐ今年の梅雨も終わりそうです。しかし、ここ数年は梅雨といっても雨らしい雨が降らない空梅雨の年が続いていました。しかし、今年は訳が違うようです。降るとなったらバケツをひっくり返したなんて言う表現では到底間に合わない程の量の雨が降る日が毎日一週間以上続いています。

熱海や福井など多数の地域で甚大な被害が起こっています。逃げ遅れ、生き埋めになってこの世を去るという事がどれだけ苦しい事か恐ろしい事かということに思いをはせた時、健常者でも障がい者でも人間という生物の無力さを感じずにはいられずに、心を痛めながら、ニュース報道を見聞きする私です。

さて、雨の日に大きな電動車椅子を使用して、外出する時の事についてお伝えしたいと思います。重度訪問介護という制度を活用して、地域で生きている重度障がい者の人たちの場合、ただでさえ外出をするということに様々なハードルがあったり、そのために普段以上に介護をする人員確保の必要があります。

先日来、インターネットで話題となっていた電動車椅子の利用者が駅を利用しようとしていた時に、駅員さんに乗車拒否をされた事は、私が自立生活を始めた21年前は移動手段を確保するために日々行う障がい者運動であり闘いでした。

それらの事に加えて、連日の大雨をものともせず、外出することそれ自体で体力を消耗することは間違いありません。ましてや医療的ケアや体力が弱い障がい当事者にとっては、せっかく計画した外出を取りやめる選択肢が出てきてしまっても、やむを得ないこともあると思います。

ただ一つ、雨の中予定していた外出をするか、しないかを決めるのは周囲の家族や介護者の判断ではなく、本人が決めることが可能な人の場合は本人の決定で決めることが出来る自己決定権を重視して欲しいと切に願うばかりです。

私は外出の予定をよほどのことがない限りキャンセルはしません。何故ならば、余暇活動的外出ではなく、社会参加活動なので、相手が私を待っていることも多く、雨で出かけるのが大変なので今日はお休みしますと、そう気軽に言える体質の外出ではないことがほとんどだからです。

私もたまにある準プライベートな外出は、今日は体調があまり優れないからとか、寒さ、暑さに負けて家にいる日もあるのです。その辺の感覚は健常者の方とまったく変わりません。

しかし、雨の中外出する時の準備は健常者の様に傘をさす、長靴を履くというだけでは済まないのです。この原稿を読んでくださっている皆さんは、車椅子用のレインコートを見たことがありますか?

福祉用具のカタログに福祉機器などと並んで、レインコートが掲載されています。高機能になると、電動車椅子の操作をする手元が透明になっていてスピードや充電残量などを確認しながら走行することが出来ます。しかし、値段が高価で買うことに躊躇してしまうことがあります。

私が使っている車椅子用レインコートは足まですっぽり包めるように長くなっており、頭からかぶって、1枚で覆えるタイプのものです。うまく装着していれば下からの跳ね返りも含め、たたきつけるように降っている土砂降りでも濡れることがほとんどなく移動することが可能となるのです。

フードが少し深すぎるので、市販のレインハットを併用すると視界が確保され、大変便利です。車椅子レインコートのタイプも複数あり、上半身と下半身がセパレートに分かれているものもあります。

強い雨でも外出をすることを想定するのかによって準備が変わってきます。雨だけではなく、風も強い日はレインコートが煽られて風に飛ばされ、着ている意味がない状況となってしまうので、洗濯ばさみなどを駆使してあちこち車椅子に固定し、濡れることを最小限に食い止めながら行動するのです。

普段は私の指示に従って私に聞いてから何事も私の手足となって生活を支えて欲しいと伝えています。良かれと思って先回りして私のしたい事と違うことはしないで欲しいと再三新人介護者の方には伝えるのですが、レインコートの装着に関しては介護者も傘を下ろして、私にレインコートを着せなければならないので、スピーディーに着せて欲しいというのが最大の望みになります。

これで着せられていますかと尋ねられても後ろの部分は全く見えないので、濡れなければ大丈夫と答えるより仕方ありません。私の声は車の雑踏にかき消され、前に響いていくので後ろで介護をしているときはほとんど意思疎通ができない状況となってしまうのです。

土砂降りの中、ほとんど衣服を濡らすことなく帰宅出来た時には達成感があります。レインコートを脱ぐ時にもコツが要り、せっかく濡れずに帰ってきても、脱ぐ段階でびしょ濡れとなることがあると悲しくなってしまいますが、雨の日の外出介護の習得は新人介護者のトイレ介護に次ぐ二大要件となります。

雨でも行かねばならない外出先がある事はある意味当然のことです。大変でないと言えばウソにはなりますが、めげずに社会参加活動の為、明日からも出かけていこうと思います。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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