『異端の福祉』S1グランプリ 受賞作品【 特別賞 】「異端の福祉」と”生き延びる”の肯定 / 中川雄大(ホームケア土屋 大阪)

「異端の福祉」と”生き延びる”の肯定 / 中川雄大(ホームケア土屋 大阪)

『異端の福祉 「重度訪問介護」をビジネスにした男』は、株式会社土屋の創業者である高浜敏之氏の軌跡を描いた本です。彼は社会起業家として、重度訪問介護サービスの全国展開に挑み、史上初となる同一法人による全国47都道府県における重度訪問介護サービス提供事業所の設立を達成しました。

この本は高浜氏のストーリーから始まります。彼は学生時代にプロボクサーを目指していましたが、アルバイトとボランティア活動を掛け持ちし、差別や貧困の解消に力を注いでいました。

しかしその反動で自らを傷めてしまい、過酷な生活を送りながらも、現在は年商50億円を超える企業の経営者となっています。その背景には、重い障害を抱える当事者との出会いが大きな影響を与え、彼が進むべき人生を選択するきっかけとなったのです。

さらに、高浜氏の人生を大きく変える要因として、最愛なる奥様の存在も描かれています。彼女が交通事故の経験をした際にも、彼の大きな転換点がありました。このような出会いや経験が、高浜氏の使命感や思想を強め、彼が社会活動家から社会起業家へと変貌していく過程が描かれています。

本書では、高浜氏の異端な挑戦が重度訪問介護のビジネス化に貢献した点や、重度訪問介護業界の現状課題にも触れられています。さらに、株式会社土屋の設立経緯や経営理念、従業員と利用者のエピソードなどが詳細に描かれています。

高浜氏は「福祉は清貧であれ」という業界のタブーに挑み、重度訪問介護をビジネス化することで、障害者が自宅で暮らすことを当たり前の選択にできるようになり、また彼の情熱と決意によって、重度の身体障害や難病を抱える人々がどこに住んでいても在宅生活を送ることができるようになりつつあります。

しかし、どれだけ環境が整おうとも、それを知った上で、クライアント(利用者)自身が「生きること」を望めるようにならなければ意味がありません。国民性としても強くあるように、人に迷惑をかけてはいけないと考え、10人に7人が延命治療を拒否してしまうのが日本の現状です。

現に私も20歳の時、母を亡くした際に主治医から延命治療をするかどうかの選択を迫られた過去があります。
私は激しく葛藤しましたが、当時では自身の知識や経験も乏しく、最終的には母が元気な時に言っていた「苦しいのが嫌だから延命治療はしないで」と言う言葉をそのまま飲み込み、延命治療は選びませんでした。

ところが、自身も親の立場となり、この土屋で従業員として学んだ経験や、これまで社会生活を通して、母が「息子や娘へ迷惑をかけてまでは生きてられない」と思ったのかもしれない、と強く感じるようになりました。

母が自身の生きたいという意思に反して、自分に「延命治療はしないで」という言葉を伝えていたのかもしれないと…。

周りの大事な人への迷惑になるから…
そこまでして生きたいと思うことがおこがましい…
迷惑をかけてまで生きる価値は自分にあるんだろうか…

“生きたい”という望みを持っているのにも関わらず、生きることを選択できない状況にある人達が多くいる中で、一人でも多くの人に「土屋があるから生きてもいいんだ」と”生き延びる”ことの肯定をしてもらえるように、私は土屋の従業員として日々奮闘しております。

『異端の福祉』は、株式会社土屋の従業員だけでなく、今後同社への入社を考えている方や、福祉業界全般に興味を持たれている方にもおすすめの一冊です。

株式会社土屋の設立経緯や経営理念、土屋のアテンダント(従業員)とクライアント(利用者)のエピソードを通じて、彼らがどのように共に歩み、障害者の生活を支援しているのかが描かれています。これらのリアルな内容は読者の心を惹きつけ、あなたの世界をより広げるきっかけになると思います。

関連記事

TOP