地域で生きる/21年目の奮闘記㉛~「いのちの停車場」という映画を鑑賞して~ / 渡邉由美子

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

先日、いつもの用事が思いの他早く終わり、珍しく少し気持ちにゆとりを持てる時間ができました。普段私は公私の区別をつけたり、切り替えをしたりしてプライベートな時間をきちんと確保することが苦手です。ただただがんばっていればいいような気持ちになってしまって遊ぶことができずに日々を過ごしてしまいがちになり、時には何がしたくて地域で生きたいのかという根本原則の目標を見失ってしまうことがあります。そこで、久しぶりにこのご時世にどうかなぁ?と大変迷いつつも映画を鑑賞してきました。

その映画の題名は「いのちの停車場」という映画でした。
「いのちの停車場」は吉永小百合さんの76歳にしての迫真の名演技が話題となっており、原作本も出ているようで、各社新聞の批評などでも高評価を得ていたため以前からすごく気になっていました。

また、私は松坂桃李もイケメンな上に癒し系で大好きなので、それにも惹かれて見に行ってみました。最近涙腺が弱くなっているせいか久しぶりに感動の涙を流しました。

その理由は現代の医学では、後天的な事故で起こった障がいを再生医療で治癒することが不可能ではないことを明るいタッチで示唆したり、その治療を試みるためには財政の課題が大きいことを吐露しつつも、将来的には治る可能性が高い時代はすぐそこまで研究段階としてはきていることを感じることができました。

また全身の耐えがたい痛みであるアロディニア状態に陥った本人や家族がどんな状態で暮らさなくてはならなくなるのかといった、精神的な面も含めた社会問題を赤裸々に提起している映画でもありました。

それとは少し状態は違うかもしれませんが、私自身が長年高校生の時から抱えている課題とオーバーラップする感じで切なくなりました。私の場合は脳性麻痺の過緊張の亢進により、普段は訴えてもどうにもならないのであまり介護者などに言ってはいませんが、どうにも拭い去ることのできない痛みを強く抱えており、アロディニア状態であると医師から宣告されたこともあるので人ごととは思えず、現代医学の西洋東洋問わずの限界を感じずにはいられないことに身につまされる思いを禁じ得ませんでした。

医学的に明確に骨が折れているというような所見がなくても痛いのは痛いのであって、藁をもすがる思いの中でお金や労力をかけて痛みの除去に翻弄される毎日に疲弊し、追い詰められていってしまうことは十分に考えられる悲しい現実なのです。

ひとりひとりの患者の日々は痛みのない人には想像しえないことなのだと思います。目に見えることに対処する医療だけではなく、原因の解明されない病の進行を止めたり、痛みを軽減したりすることが可能となればよいと思います。難病をかかえる当事者を含めて生きやすい社会の実現が可能になると、この映画を観賞したことをきっかけに掘り下げて考える機会となりました。

全体を通して、考えさせられるのは人が人生の終末期をどのように迎えるべきなのか?というものです。在宅医療の問題や安楽死の問題についても触れており、在宅介護を受けながら長年地域で生きることにこだわっている私にとってはとても興味深い内容でした。

終末期を迎え、自分の人生を振り返った時に人生を肯定できるようになるために今では身体がきつくなってはきたものの、自分が一番必要としている介護に携わる人材を作り出す活動に生きがいを感じながら全力投球しています。この活動そのものが地域で生きる私の存在意義なのだと感じており、そんなことをしながらより良い余暇も追及して、私らしい暮らしの継続をしていきたいと考えています。

また、間近に迫っている課題としては、両親をどのように最後苦しまずに見送るかという課題であり、その次は自分自身がどう年老いて、どう他人の介護を受けながら人にあまり迷惑をかけない形でこの世に終止符を打つことができるのかということです。こういった普段から考えておかなければならない問題を考える、いいきっかけとなる映画です。

生きている限り生死の問題は避けては通れないことである以上、考えたくないものとか自分には関係ないものだとは思わずに普段から準備を重ね、いざという時にうろたえることがないようにしておくことが大切だと改めて思いました。

ひいては物事には旬があり、その年代にしかできないことを体力面、知性面、経済面等、兼ね合わせて実行していくことが人生をより良いものとし、成し遂げていく道へと繋がっていきます。そう考えていけばみんな平等に行く道通る道なので、死ということの捉え方が違ってくると思います。

今回はこのような映画を観賞するということでしたが、社会参加活動を頑張ることだけではなく、私自身の年齢も振り返った時には余暇活動の充実を図ることの大切さをつくづく感じました。コロナ禍とはいうものの観劇や映画鑑賞は私自身の感性を磨く一助となる行動なので、これからも積極的に行っていきたいと改めて思いました。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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