あなたを愛そうとしたとき、他の全ての人もまた、愛されていく社会~創業2周年を迎えて~ / 松本満(ホームケア土屋 関西)

先日、会社の好意で、「民間社会福祉施設職員等オンライン海外研修」に参加してきた。
本来は、スウェーデンに10日間ほど研修に行けるのだが、コロナ禍で、オンラインとなってしまった。ぜひ次回は、現地の視察に参加したい。

今回は、そのレポートを含めて、重度訪問介護に携わって思うことを述べてみたい。

1 自由や平和は作るもの
スウェーデンと言えば、天国のような福祉国家であり、「ノーマライゼーションが完全にいきわたっている先進国」という、あこがれを持っていた。
そのスウェーデンで、1950年代までは、障害者を大型施設に隔離し、人間らしい生活とはかけ離れた状況に置いていたと聞いて、驚いた。今があるのは、その中から当事者や家族の声や運動によって権利を獲得してきたこと、また自由を獲得するために、数々の苦難を乗り越え、戦ってきたということを知り、ただで得られるものではないということを教えられた。
我々も、「真の」ノーマライゼーションの実現、またダイバーシティの実現というビジョンの実現のためには、まだまだ発展途上であり、これからの働きが必要だし、「まだまだ発展していかなければならない分野」なのだと認識した。

2 重度訪問介護の現実
今回、このセミナーに参加しようと思ったきっかけは…
5年近く介護に携わり、重度訪問介護に携わって3年近くになる。重度の障害者や難病の方が、24時間、住み慣れた自宅で、自分らしく暮らしていけるためのサービスを提供するという点において、すばらしい制度だと思う。我々も、できるだけ利用者に寄り添い、利用者の願いをかなえたいと思うし、利用者の喜ぶ顔が見られたときはうれしい。
また施設介護をしてきた介護士が、「もっと利用者に寄り添った介護がしたい」と言って入職してくるときには、介護士の純粋な気持ちを垣間見、やっぱりそうだよな、と思う。
しかしその反面、24時間、利用者と一緒の空間にいるため、あまりにも利用者やその家族に気を遣って疲れたり、利用者の期待に応えようとするあまり、過剰労働(過剰支援)となり、心が折れてしまったり、利用者の気持ちをダイレクトに受け止めすぎて、介護士の心が傷ついてしまうのも多く見てきた。
せっかく、利用者に寄り添った介護をしたいと思って入ってきた介護士が、傷ついて介護職が嫌になって離れてしまうのは、心が痛む。人間関係の縮図と言われたら、そこまでなのだが・・・。
福祉の先進国といわれるスウェーデンでは、障害者と介護士の関わり方がどのようなものなのか、また障害者も介護士も幸せになれる方法やヒントはないのかという思いで、このセミナーに参加した。

3 パーソナルアシスタントという制度
今回のセミナーで参考になったのは、「パーソナルアシスタント」という役割があるということである。
パーソナルアシスタントというのは、介護職員ではない別の役割である。例えば、映画に行く、買い物に行く、家事の手伝い、相談相手等々。それらは、利用者が主体的に生活するために、自分で選ぶことができ、市町村が雇用する。パーソナルアシスタントは、ボランティアではなく、有償である。
私が感心したのは、「介護」と「生活のサポート」が選り分けられている点である。
現在、重度訪問に携わっている介護士は、身体介護から、家事支援、外出支援、見守り、そして、必然的に「利用者の心の内を聞かざるを得ない状況」にある。強いては、うまくマッチしないと、なかなか認めてもらえない状況に追い込まれてしまうこともある。また時には、マッサージや、医療的ケアの領域まで要望されてしまう。
これは、利用者がわがままなわけではない。必要性である。しかし、それを要求された介護士は、やさしいがために、必死になって応えようとする。その結果、倒れてしまう。
私は、前々から、利用者の心の訴えを聞くカウセンラー的なものはないのだろうかと思っていた。一介護士だけで受け止めるのは、非常に難しい。
身体的なことは、医療。介護は、福祉。心理的なことは、カウンセラー。そして自主的な生活の様々なサポートは、パーソナルアシスタントとえり分けていけたら、どんなに充実するだろうかと思う。
このパーソナルアシスタントには、「家族」もなることができるというのは、さすがスウェーデンだと思った。
また、「家族の時間を持つため」に、パーソナルアシスタントの制度があることを知って感心した。往々にして、障害者に構うあまり、他の兄弟や子供が犠牲になることもあり得る。この配慮を知った時に、「障害者だから」ではなく、障害があろうがなかろうが、一人の人格者として、個々を大切にすること、家族を大事にするノーマライゼーションの考え方の浸透を垣間見た。
すぐにこの制度を活かせるわけではないが、我々の側で、介護職の役割を精査することはできるのではないだろうか。
いわゆる「何でも屋」から、医療的なことは医療職に、介護職は本来の介護に、その他のことはその他の地域資源やサービスに頼んでいくこと。他職種が連携して、一人の人をサポートしていくこと。そこに、利用者と介護士との「適度な距離感」が保たれていくのではないかと思った。
それはいわゆる利用者を見捨てるのではなく、「餅屋は餅屋に」。一人の人を色んな人が支えていく、それがダイバーシティーではないかと思う。そういう意味で、重度訪問介護に携わる我々は、もっと視野を広く、もっと専門的に、もっと技術を身につけるべきだと思う。

4 社会とのかかわり~「生きる」ということ
2つ目に感心したことは、スウェーデンでは、すべての障害者が、リハビリテーションに登録。そこから必要なサービスを受けながら、ある人は就労へ、ある人はデイアクティビティーセンターへ、ある人はパプティックセラピーへと出かける制度があるということだ。
一般企業に就職し、賃金をもらう人もいる。しかし、デイアクティビティーセンターのコーチと一緒に、無給で働く人もいれば、自分の好きなアクティビティーセンターへ行く人もいる。必要なリハビリを受けるために、パプティックセラピーを受け、マッサージや、肌のふれあい、料理作りをして、「匂いや感覚の刺激」をリハビリする人もいる。
どれも、その人の「仕事」だそうだ。有給か無給かは関係がない。
その人が好きなことをし、役割を与えられて、自分に任せられていく。いわば社会参加であり、一般の人とのふれあい、共生である。これは賃金を稼ぐことが「働く」という日本的な概念とは違う概念ではないかと思う。いわば「働く」というのは、本人の主体性、責任、生きるということ、居場所なのかもしれない。
重度訪問介護が、しばしば、「家で自分らしく生活する」という概念から、「家で療養する」という感覚に代わっているような気がする。
確かに障害があり難病があるので、医療的なケアや配慮は必要だ。しかし、家で「入院」をしたいのか、家で「生活」をしたいのか。きっと、家で生活をしたいから、在宅を選ばれたのだと思う。もっともっと、いろんな形で社会参加ができたらと思う。賃金を稼ぐことだけが「働く」ことではなく、いろんな活動に出かけていくことが、ADLを維持し、QOLを上げていくことにつながっていく、その人の「働き=生きる」ではないだろうか。それをサポートできたら、我々も「人の役に立った」とやりがいを感じる。

5 ダイバーシティーを目指して
今回の学びとは直接は関係がないが、これだけITが発達し、自動化が進んでいる。AIも目覚ましく発展している。
しかし、いまだ介護や福祉の業界では、マンパワーに依存せざるを得ない。もっともっと、障害を持った人、病気の人に目が向けられ、自分で操作し、自分で行動できるように助けるマシンが産み出されていけば、当事者も幸せに、そしてそれは必ず社会に貢献できるのではないかと思う。
私が、株式会社土屋を選んだ理由は、代表が、「福祉=ボランティア=精神論、株式会社=金儲け=消費の概念を打ち壊し、社会貢献をしながら、経済が回っていく仕組みを作りたい」と言ったからである。いわば、これまでの経済が、「非人間的」であったのを、人間的なものにしようと意気込んでいる。と、思ったからである。
入社の時に見せていただいた有名な経済学者も、もはや「破壊的な非人間的な経済の仕組みは成り立たない。これからは環境的であり、社会を作り上げていくための経済であるべきだ」と言っている。
これまでの福祉の概念でもなく、これまでの経済観念でもない、人が真に豊かになるための経済を確立していってほしいと願う。
株式会社には、もう一つの強みがあると思う。それは「自由」だということ。(もちろん法規は守らないといけない。)チャレンジができるということ。
重度訪問介護という制度の中で、国から委託されながら、業務を粛々と行っていくことも必要だと思う。
しかし、重度訪問介護をしっかりと行いながら、「なお足りないところ」を見出し、その人が豊かな人生を生きていくために、トータル的にサポートしていくこと。その仕組みを作ったり、システムを開発したり、物を供給したり。一人の人間の営みの中に、ありとあらゆる可能性とチャンスがあるのではないかと思っている。
そんなことを、土屋で目指せたら良いなと思う。
今、株式会社土屋は、福祉の様々な分野に進出し、福祉の総合商社を目指している。現行の制度の中で、役割を担っている。それも必要なことだと思う。
しかし、前にも述べたように、今の制度では追い付いていないことも多々ある。豊かな人生を送るために、足りないところはまだまだあるような気がする。そのようなところにチャレンジして、全人格的なコーディネーターになれるような、そんな総合会社であったら良いなと思う。
あくまでも一個人の夢物語ではあるが・・・

 

松本 満(まつもと みつる)
ホームケア土屋 関西 兵庫エリアマネージャー

 

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