地域で生きる/22年目の地域生活奮闘記92~ついに我が家にも本格的なインターネット環境が!~ / 渡邉由美子

現在の家に住んで長い年月が経ちました。しかし、今どき珍しくインターネット環境が全くない物件を契約してしまいました。車椅子を家の中に入れ込んで生活ができるとか、段差がなくバリアフリー環境が整っているということがまず、家選びの優先順位になるからです。そうしてインターネットがうまく使いきれていないことに長年ストレスを感じながら暮らしてきました。

そのような不便さを解消したいと考えて、自宅に光回線を導入する決意を固め、専用ショップに相談に行ってみました。軽い気持ちで訪れたのですが、まるで外国にでも来てしまったように私には担当者が話していることが全く理解できませんでした。

とはいえ担当者の話を介護者に通訳してもらいながら、少しでも日々の生活が便利になるように契約をする努力をしました。コロナ禍が長引く中で、得意・不得意に関係なくネット社会についていくことは、とても重要なことだと痛感しています。

そんなことを考えながら話を進めるうちに、この際、料金プランも見直し、少しでも便利に安く暮らす方法を考えようと思いたちました。でもパンフレットを少し見ただけでは、やはりなにが得で、なにが損なのか全く見当もつきません。

たとえば料金プランに「永年マイナス○○円」と書いてあっても、基本料金そのものが高いといったものです。いったいどれほどの人が料金プランをきちんと理解してお金を払っているのかと、考えさせられてしまいました。

機械に強く、ネット関連の知識のある人や子どもの頃から家庭や学校にそういった環境があって、当たり前のように使いながら育ってきた人以外はむずかしいのではないかと思います。

ましてや重度訪問介護を使って生活している人の中には、知的な障がいがあるなどの理由で、紙のパンフレットをポンと渡されただけでは理解できない人も数多くいます。

またその人の介護をしている支援者全員がモバイル系に強いとは限りません。その他にも視覚障がいがあって、口頭で丁寧でわかりやすい説明がされなければ、このデジタル社会から取り残されていく人はたくさんいるのです。

国の政策のひとつとしてデジタル庁が創設され、誰もが最先端のデジタル技術を駆使して生きていける社会の実現を、早期に本格的なものに転換していくといわれています。重度障がい当事者にとっても、わかりやすく使いやすい制度となることを願います。

知的障がいや視覚障がいのない私自身も、たとえば使用料金の明細書をみて、何のためにこんなに多額の費用を取られているのか、理解できていない状況です。わからないときは電話問い合わせをする、それでもだめならショップに出向くといったことをしながら、適切な料金を払いつつ便利に暮らしていけるようにしたいと思います。

このブログを書いている今日も夕方からzoom会議が予定されています。光回線の安定したネット環境を感じながら、より集中して会議に臨め、光回線を導入したことで、より良い社会参加活動ができるようになったと実感できたらと思います。

光回線についての詳細を知りたいのであればこの担当部署、携帯電話についてはこの担当部署、さらにプロバイダーの契約はまた別の会社といったように、問い合わせ先が複雑に分断されており、やり取りをすることもとてもむずかしいと感じました。

また個人情報保護の観点からもむずかしさが伴います。相手が電話口で言っている事を介護者が私に説明するにあたって、間に違う声が挟まったりすると「お電話をいただいているのは契約者ご本人様で間違いありませんか」と何度も確認されてしまいます。もう少しわかりやすい仕組みになって欲しいと思わずにはいられませんでした。

健常者がマジョリティの社会では、誰もがある程度はわかっているという事が前提になっている場面が多いように感じます。これはネット環境の話だけではありません。

見た目にはわかりにくいボーダーレスの障がいをもつ人たちの中には、それらをわかったようなふりをして生きていかなければならない場面が多々あり、わからないことを気軽に聞くことができない苦しみを抱き、社会から孤立してしまうこともよくあるのです。

スピード社会・蹴落とし社会ではなく、世の中の八割の人が行う事柄については、万人がサポートを受けられる環境や制度がつくれたらと常に考えています。

今回、自宅に光回線を導入するにあたっても、私が理解できていないことを代わりに頼まれるということに違和感をおぼえる介護者もいました。「どこまでが介護でどこまでがそうでないのか、区切りがあいまいすぎるのではないか」といった痛烈なご意見もいただきながら、やっと今日、光回線を開通するに至れました。

また別の介護者からも、私自身がパソコンやインターネットに関する知識や技術を習得したり手を動かしたりすることができないのであれば、明確に指示をするべきといった意見をもらったこともあり、これらは永遠の課題の如く存在しつづけています。

これらの問題はそれぞれの介護者の受け取り方によるものも多く、本当にむずかしいと感じます。「身体介護や家事援助だけではなく、現実社会についていけるよう、総合的にサポートしていくのが重度訪問介護の介護者の仕事だ」と捉える人もいれば、「知的能力に関するサポートまでするのは行き過ぎだ」と捉える人もいます。どちらも正しい意見ではあることは確かです。

私が介護者に丸投げするのではなく、「少しずつ習得して、いつかは自分で出来るようになるんだ」という姿勢を見せるか見せないかも、介護者が手伝う気になるかそうでないかの大きな分かれ道になるのだと思います。

なにはともあれ、ネット環境が整ったことで、会議だけではなく生活を楽しむ時間にも活用していきたいと思います。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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