地域で生きる/23年目の地域生活奮闘記117~排泄介護の悩みは尽きない~ / 渡邉由美子

私は胃腸があまり丈夫でなく、度々お腹の調子を崩します。日頃の不摂生がたたっていること、また寝る時間をきちんと確保できていないがために、慢性的な寝不足が続いていることが原因なことは重々承知しています。つい先日も排泄の問題で大変な苦労をしたので、今回はそれについて記していこうと思います。

まず大前提として排泄の問題は、私が障がいを持ちながら生きる上での最大の悩みであり、最も苦労することです。自立生活を始めて間もないころは自宅に介護用リフトもなく、女性介護者が1人で脂汗をかきながら必死に私の身体を持ち上げてトイレ介助をするというのが日常でした。

それが自立生活を成り立たせるための第一条件であったことはいうまでもありません。今の住まいは完全バリアフリー設計なうえ、介護用リフトも設置しています。そのため車椅子をトイレの横ギリギリまで寄せて介護用リフトを使って移乗させてもらうことができ、私自身も介護者もトイレ介助の負担を軽減することができています。

しかし最初に一人暮らしをした家はバリアフリー設計などない一般的な家で、トイレにも段差がありました。そのためトイレと壁の間にしゃがみこんでしまうような体勢になり、変な角度に曲がった足の上に自分の体重がかかるといったような不安定な状態で排泄をせざるを得ませんでした。

当時は若かったので骨折こそしなかったものの、介護者に立ち上がらせてもらえるまでは悲鳴をあげたくなるくらいの痛みを必死にこらえながら過ごしていたものです。

日々、介護者と一緒にどうしたらその負担や苦痛を解消することができるか暗中模索してきましたが、なんとかトイレを済ませてそこから移乗させてもらえた時には、お互い精魂尽き果てるほど疲労困憊していました。今となってはほろ苦いながらも懐かしい思い出として記憶しています。

長年そんな風に解決し得なかった排泄問題も、行政の支援によって安全で安楽にできるようになり、私も介護者も負担が少なくなりました。今では自宅にいれば介護リフトを使って排泄の回数を気にせずに、行きたくなったら行くという当たり前のことができるようになっています。

また数年前から外出時には排泄介助の負担を軽減することを主な目的に、月153時間の範囲内で2人介護がやっと認められるようになりました。そんな風に以前に比べれば介護の受けられる状況は大きく改善しており、日々の悩みも少しずつ解消できるようになっています。それ自体は本当にありがたいことだと思っています。

それでも解決しえない事態がつい先日発生してしまいました。私はふだんから排便の調子がよくありません。薬を飲んだり浣腸をしたりと、子どもの頃から様々な苦労をしながら生活しています。

自立生活を始めたばかりの頃はどうしても介護スタッフに排便の介助を頼むことができず、週末は親元に戻って母親に排便の世話をしてもらい、平日に一人暮らしをするという形で過ごしていました。

そうこうしているうちに腸閉塞になりかけて緊急入院をしなければならない事態にも遭いましたが、1人介護で外出をしている時にお腹が痛くなってしまった場合には脂汗をかきながらもなんとか我慢するという日々を送っています。

ふだん1人介護で外出をする際には、介護用リフトのシュリングシートを付けて、お尻を30㎝程ずり上げて差し込み便器を置き、その上に座る方法で排尿を済ませます(車椅子に特注で装置を付けることで、自宅の介護用リフトと似たように身体を持ち上げられるようになっています)。

今までその装置を使うのは排尿のときだけで、排便はしたことがありませんでした。しかし今回ばかりは悠長なことを言っていられないほどの体調になってしまったので、とにかく排尿と同じ方法でいくしかないと覚悟を決め、昔介護者としていたようにその日外出に同行してくれていた介護者と「お互い修羅場を切り抜けるぞ」というアイコンタクトをしてトイレに入ったのでした。

しかし、たまたま飛び込んだ多目的トイレは荷物を置くスペースもないほど狭く、やりにくいことこの上ありませんでした。そうこうしながら切迫するお腹の痛みを必死にこらえつつ、なんとか急場をしのぐことができたのでした。

久しぶりに「やはり私の生活の困りごとの一番は排泄問題なんだな」ということを痛感させられました。介護者にも近年まれにみる大変さを背負わせることとなってしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

その日の活動は長時間かかるものだったため、念のためにリハビリパンツを履き、中にパットを付けていました。それにも助けられて何とか究極の体調不良を乗り切ることができましたが、この出来事を通して改めて、必要な人に必要なケアが十分行き届くことの重要性を認識したものです。

それと同時に外出先での急な体調不良時の排便介助など、大変な仕事を担ってくれる介護者たちにその労働に見合う賃金を保障してあげられる社会保障制度を一日でも早く作りたいと思いました。

また介護者との関係についても、医療的ケアも含め、やむを得ない時には大変であろうと思われる介護も遠慮なく頼むことのできる、お互い対等な立場の保てる状態にしておきたいと思いました。

 

◆プロフィール

渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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