【異端の福祉 書評】異端の福祉を読んで / 日髙健太(ホームケア土屋 郡山)

異端の福祉を読んで / 日髙健太(ホームケア土屋 郡山)

まずこの本と僕は出会えてとても良かったと思います。なぜ良かったと思えたのかは後述します。

本題に入る前に僕の姉の話をさせて下さい。僕の姉も異端の福祉人間でした。
12歳から沖縄でハンセン病やHIVの啓発活動を始め、14歳で発達障害が解りました。そこから急速に2次障害が悪化し、あっという間に精神科に入院しました。

そして退院後、権利擁護活動は再開し、17歳のときに自立生活センターで当事者運動を始め、それだけではなく重度訪問介護従事者養成研修を経て自立生活センターを利用している当事者様宅へ当事者スタッフが訪問介護に入るという変わったことをしていました。その上、医療的ケアもしていたものですからビックリします。

数年後、体調が思わしくないため、4年前から今度は自分が重度訪問介護を月/744時間つまり24時間体制でヘルパーが常時ついている状況を作り上げ、実際にヘルパーを定着させて来た人です。

僕は自立生活センターで働いていた、この姉に影響され福祉の世界へ歩み出しました。
僕が働いていた自立生活センターは介護報酬の80%以上を人件費として使う事業所だったので、この本に書かれているような「介護=低賃金」という印象ではありませんでした。
ただ対象者様がやはり肢体不自由の重度障害なので肉体労働だと思いました。

転居のため求職活動をしている時にホームケア土屋と出会い、現在も勤めさせて頂いているという状況です。

僕はこの本を読み自分の姉のしてきた障害者運動、自立生活運動の歴史、筆者の考えやいま起きている問題に高い共感の意を持ち、改めて自分が何も考えずにヘルパーとして働き出したことが、福祉の担い手となり重度訪問介護の制度を支え、もちろんクライアントの生活の一部の人間(ヘルパー)として、そして「ヘルパーのお仕事をしてお金をもらって生活している一人の人間」ということを理解できました。

また先の当事者運動が僕たちの生活を保証する介護報酬をきちんと法整備してくれていたのだと実感しました。

僕の姉にも強度行動障害がありますが、個別支援に主軸を置くことでP153でも記述されている通り、現在はとても落ち着いています。
強度行動障害に対する個別支援は非常に有効だと僕も考えており、社会的入院になっている精神障害者や施設での入所を余儀なくされている知的障害の当事者が地域生活を希望する場合、優先的に重度訪問介護が本来は使われるべきであると考えます。

しかし強度行動障害による精神障害者あるいは知的障害者の重度訪問介護は全国的に見ても実数が低く、制度周知、行政側の認識がまだまだ足りないと思いました。

また精神障害者に限って言えば、区分4以上強度行動障害要件10点以上を満たす人が地域に居ることが少なく、P43に記述されているように身体障害者の在宅生活が2002年当時レアケースだったのと同様に、精神障害者が重度訪問介護を使って地域生活を送るのはそれと同様にまだまだレアケースだと感じました。

ホームケア土屋では様々なクライアントに出会います。障害だけでも、筋ジストロフィー、脳性麻痺、頸脊髄損傷のクライアントを始め、視覚障害、精神障害、知的障害そしてALS。
重度訪問介護のみならず居宅介護、そして介護保険。様々な「社会的障壁」がある方に必要なサービスが供給できる体制はとても大切だと僕は思います。

また僕は重度訪問介護従事者養成研修を前職で取っており、これ以上ステップアップは出来ないのだろうと思っていましたが、ここにはケアカレッジがあり、実務者研修を取らせて頂きました。そして今年4月から更にキャリアパスし、コーディネータに任命していただけました。

僕はまだまだ未熟者の24歳で、これから経験をもっと積みたいと思っています。
そしてその機会を存分に与え、キャリアパスもできるこの「ホームケア土屋」のシステムがとてもやりがいがあり、日々育成してもらえています。

この本に書いてあるとおりで、「福祉でも稼げる」。これは僕の未来を作ってくれていると思います。だからこそ対象者様に還元できるサービスを提供したいとも考えられるのだと思います。

また、同一クライアントでも日々変化があるということが僕の中ではとても学びになり、その変化に対応するにはどうしたらいいのかを考えることはとても大切だと思っています。

ALSの7割は人工呼吸器を未装着という衝撃的な数値を読みましたが、僕はまだ人工呼吸器をつけるか否かの相談を受けた時にコーディネータとしてどうあるべきかこれから学んでいく必要があると強く思いました。

この様な環境に身を置き、日々学び、お仕事させてもらっていること、書評になっているのかは少し自信がありませんが、「書評を書いてみる」という貴重な機会を設けて下さり、ありがとうございました。

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